セリーナは硝子をさらに蹴って割ると伸びていた木に飛び移り、素早く木を降りた。
 その様子を見たヴィアザは、刀を構え直した。


 セリーナは屋敷周辺を捜索していると、先ほどの六人組を見つけた。
「待ちなさい」
 セリーナは移動していく六人組の前に先回りすると、鋭く言った。
「こやつらは、家にいた者達とは違うぞ?」
「それがなに? 全員殺してあげる」
 セリーナは低い声で吐き捨てた。
 男二人が動くよりも早く、リヴォルバーを抜いた。
 銃口をぴたりと、その二人の頭に突きつけた。
「なっ……!」
 男達は動きを止めるしかない。
「誰がこようと、あたしの敵じゃないのよ」
 セリーナは同時に引き金を引いた。
 頭を撃ち抜かれた二人は即死。
「ひいいっ!」
 当主が怯え出した。
「ならば、私が相手をしよう」
 一人の男が剣を手にした。
「どうするのかしらね」
 セリーナは静かな声で(わら)った。
「こうするんだよっ!」
 男は言い放つと、素早い動きで距離を縮め、剣を繰り出してきた。
 セリーナは交差させたリヴォルバーで受け止めた。
「奴の武器は封じた!」
 叫ぶと同時に、左右に男達があらわれ、振り下ろされた剣が迫った。
「封じた? あんたの目は節穴なの?」
 セリーナはそのままの姿勢で引き金を引いた。
 左右にいた男二人の腹を撃ち抜いた。
 剣を弾き返し、蹴りを見舞うが躱された。
 セリーナは舌打ちをした。
「ちゃんと殺しておかないとね」
 セリーナは痛みに転がる男二人にとどめを刺した。
「なんて奴だ……」
「敵を前に気を抜くってことは、殺してくださいって言ってるようなものよ」
 セリーナは引き金を引いた。
 当主の男が心臓を撃たれて骸になった。

「あんたはどうするの?」
「戦って死ぬ。それだけだ」
「相手になるわ」
 セリーナは低い声で言った。
「おらっ!」
 男は駆け出しながら、剣を薙いだ。
 それをしゃがんで躱すと、セリーナは引き金を引いた。
 弾丸は男の右手の甲を貫いた。
「くっ……!」
 男は剣を持ち替えて、突きを繰り出してきた。
 ぎりぎりのところで躱し、左手に一発撃ち込んだ。
 それでも武器から手を離さずにいる男を感心しつつ、セリーナは引き金を引き続けた。
 腹や胸、両腕と両肩を撃ち抜かれてもなお、男は立っていた。
「へぇ。案外しぶといのね」
 セリーナが感心した。
「これならどうだっ!」
 男は剣を振り下ろしてきた。
 リヴォルバーで受け止めつつ、届けばいいと思いながら、蹴りを繰り出した。
「がはっ!」
 蹴りも命中し、男は鮮血を流しながら、ふらふらと後退した。
「これで、お終い」
 セリーナは反撃を防ぐために、男の心臓に狙いを定めて、引き金を引いた。
 発砲音とともに、とどめを刺された身体が倒れた。
「人がいなくてよかったわ」
 セリーナは呟くと、屋敷へ戻った。


 別れてすぐ、ヴィアザは男五人と対峙していた。
「貴様らに聞くことなどない。さっさと殺してやるよ」
 ヴィアザは刀を振り下ろした。庇うように出された剣も一緒に両断してしまった。男の腹をざっくりと斬り裂いた。
「これは驚いた」
 ヴィアザはぽつりと呟くと、刀身に視線を走らせた。さすがに、剣すらも斬ってしまうとは思っていなかった。
「隙だらけだなっ!」
「それは貴様の思い込みだ」
 ヴィアザは言い放つと、刀から視線を外して、襲ってきた男の左腕を斬り落とした。
「ぎゃあああっ!」
 切断面から鮮血を垂れ流しながら、男が数歩後退した。
「それで終わり、なんて思っていないよな?」
 ヴィアザは不敵に(わら)うと、片腕を失った男の心臓を刺し貫いた。
「がっ……!」
 男はなにかを言いかけたが、言えないままこと切れた。
「貴様も、邪魔だ」
 ヴィアザは低い声で言い放ち、腹を斬られた男の心臓を刺し貫いた。
 どさりと骸が倒れた。
「一人ずつ、相手をしてやろう」
 ヴィアザは言いながら、口端を吊り上げて(わら)った。
「ちくしょうっ! なんで、勝てねぇんだよ!」
 男が怒りをあらわにしながら、突っ込んできた。
「さてな?」
 刀でやすやすと受け止めたヴィアザは、小さな声で言った。
 男は怒りを爆発させ、感情に任せて剣を振るう。
 その攻撃すべてを(さば)いた。
「おらああっ!」
 狙いも定めていない突きを繰り出してきた。
 ヴィアザは躱さずにそれを受けた。
 右胸を刺し貫かれた。鮮血が口端から滴るものの、不敵な笑みが消えない。
「なんで……!」
 驚く男に対し、ヴィアザは右手で柄を男の手ごと握り、ゆっくりとだが確実に、剣を抜き始めた。
 男は抗おうとしたが、ヴィアザの力強さに驚きながら、されるがままだった。
「……ふう」
 ヴィアザは鮮血に染まった剣を強引に引き抜くと、息を吐き出した。
「な、なんだよ! こいつ!」
 驚きを通り越して、怯えた男の声が響いた。
「誰でもいいだろうが」
 ヴィアザは吐き捨てると、男の心臓を刺し貫いた。

 残るは二人。
 ヴィアザは鮮血の滴る刀を見せつけると、男が剣を抜いて襲い掛かってきた。
 剣戟(けんげき)の音が続いた。
 互いに攻撃を仕掛けて一分ほどが経過したとき、形勢の変化が起きる。