スタスタと歩き出し、ドアに縫いつけられている男の心臓に、突き刺さった短刀を回収した。
 鮮血を殺ぎ落として、鞘に納めると、懐に仕舞った。
 骸を踏み潰し、鮮血をポタポタと零しながら、ヴィアザは次の支部へ向かった。

「ここが支部ねぇ……」
 ヴィアザは言いながら建物を見上げた。それなりに大きな屋敷だった。
 ――まぁ、表向きはこういう方が、都合がいいんだろうな。
 ヴィアザは思いながら、入口へと向かった。
「誰だっ!」
 門番が声を荒げた。
「名乗りは不要。邪魔をする気か?」
 ヴィアザは刀の柄を握りながら尋ねた。
「名乗りもしない奴を、入れるわけにはいかない!」
「そうか。じゃあ、こうさせてもらう」
 ヴィアザは言いながら、左側にいる門番の心臓を刀で刺し貫いた。
「ぐはっ!」
 刺された男は、鮮血を吐き出して息絶えた。
「お前……」
 門番は震える身体に、活を入れて、剣を抜いて対峙した。
「ここを潰しにきたんだよ。そんな奴に名など聞くな」
 ヴィアザは言いながら、男の首を斬り落とした。
 骸がどさりと倒れた。

 堂々と中に入ると、武装している男達が大勢いた。
「おらっ!」
 その中にいた近くの男が、剣を手に襲い掛かってきた。
 さっと躱したヴィアザは、男の腹に膝蹴りを叩き込んだ。
「ごふっ!」
 男は身体をくの字に曲げて、床に倒れた。
 荒い息を吐きながら、ゆっくりと立ち上がった。
「よく見りゃ怪我してるじゃねぇか。しかも、深手だ。よく、戦えるな」
「ま、気づかれるとは思っていたが。こんなの枷にならん」
 ヴィアザは冷たく(わら)うと、刀を振り下ろした。
 男の心臓を刺し貫いた。
 骸から刀を引き抜き、返り血を浴びても、ヴィアザは前を向いていた。
「なんなんだよ、こいつっ!」
「俺のことなど、知らない方がいい」
 ヴィアザは言い放つと、怯えた男の心臓を刺し貫いた。刀を強引に抜くと、周囲を囲まれていることに気づく。
「逃げ場なしか。上等だ」
 ヴィアザは不敵に(わら)うと、その場で回し斬りを放った。
 一気に五人の首が斬り捨てられた。
 バタバタと骸が倒れていく。
「強い……!」
「どれだけ殺してきたと思ってんだ」
 ヴィアザは不敵に(わら)った。
 右腕からの出血が酷いが、それでも俊敏に動き続けた。
 次々に男達の命を奪っていく。
 それから十五分が経ったころ、その場に残っているのはヴィアザだけだった。
 みな、急所を刺され、息絶えていた。
 骸をぐちゃぐちゃと踏み潰しながら、ドアを蹴り開けた。

「ひいっ!」
 ドアを乱暴に開けて、室内を一瞥すると、怯えている男がいた。
「支部のリーダーなんだろ? 情けない。せめて、俺に斬りかかってくるぐらいしろよ」
 ヴィアザは溜息を吐きながら、言った。
「なんでも渡す! だから、命だけはっ!」
「じゃあ、本部の地図」
「ほ、ほらっ!」
 男は怯えながら、分厚い羊皮紙を渡してきた。
「本物、だよな?」
 その言葉に何度も男がうなずいた。
「なら、もらっておく。だが、貴様の死に場所はここだ。それは変わらん」
 ヴィアザは冷たく言い放つと、怯える男の首を斬り落とした。
 なにも言えなくなったそれを、冷ややかに眺めながら、ヴィアザは抽斗(ひきだし)などを漁り始めた。
 しかし、役に立ちそうなものは見つからなかった。
 舌打ちをして支部を後にし、待ち合わせの場所までフードを被って駆け出した。


「無事だな」
「それだけの怪我ですんだのなら、まだいいかもしれないわね」
 セリーナとヴィアザは互いを見つけるや、苦笑した。
「貴族街の支部のリーダーから、もらってきた」
 ヴィアザが今まさに潰そうとしている、本部の地図を見せた。
「ふうん。こういう造りなのね。うん、大丈夫」
 セリーナはそれをじっと見て、構造を頭に叩き込んだ。
「じゃあ、仕上げといくか」
「ええ」
 セリーナはニコッと笑うと、リヴォルバーのグリップをつかんだ。

「用件を聞こう」
「自分の都合のいいように、他人の命を奪う連中がくる場所だと聞いたが? 俺達はそんな奴らを、殺しにきた」
 ヴィアザは低い声で言い、ニヤリと(わら)った。
「噂でしかないが、ずいぶんと調子に乗っているというか、やりすぎているとは思っていた」
「そうか。俺達のことは見なかったことにしてくれ。そして、俺達がここを潰すということも、胸の中に仕舞っておけるか?」
「なぜ、そんなことを聞く?」
「それができるなら、見逃してもいいと思っている」
「……わ、分かった。すぐにここからいなくなればいいのか」
「そうだ。じゃあな」
 ヴィアザは門番から離れると、セリーナに視線を投げた。
 彼らが屋敷の中に入るのと、二人の門番がいなくなるのが、同時だった。

「ほう。大勢いるな」
 ヴィアザは視線を投げた。
 目の前には剣を装備した男達がごまんといた。
「ちょっと」
「なんだ?」
 近くにきたセリーナをヴィアザは横目で見た。
「あたしは階段の上から狙撃する。それまで暴れるのは待って」
 セリーナは人の間を縫っていき、階段を駆け上がった。
 二階はバルコニーとなっていて、人はいなかった。
 セリーナは背中に回していたウノメナを構えて、弾を込めた。