「意識はまだあるわよね?」
「だったら、どうするって言うんだ」
「ちょっとした情報を得ておこうかなって思って」
 軽い口調だが、カオドグラルを突きつけているので、脅しにしか見えない。
「なにが聞きたい」
「組織のボスについてよ。なんでもいいから、話してくれない?」
「使用武器は槍。使い物にならないと分かれば、自分の手で殺す。気が向いたときだけな。たいていは、別の人間に殺させる。それと〝闇斬人(やみきりびと)〟とは敵対関係にある」
「そうなの。理由は?」
「この国の裏を取り仕切っているのは、我々だ。それを正体が不明で、個人か複数を指す名なのかも分からない。そんなのに奪われたくないんだよ」
「そう。じゃあ、地獄で弟に会えるといいわね?」
 セリーナは心臓を撃ち抜いた。
「さて、次にいきましょうか」
 セリーナは骸を踏み潰しながら、呟いた。


「入るわよ」
 貴族街の支部のドアを蹴破る勢いで開け放つと、男達と視線がぶつかった。
「お、お前はっ! 〝戦場に輝く閃光〟!?」
「そうよ。慌てているようだけれど、安心して? 全員殺してあげるから」
「逃げっ――」
 ――バシュッ!
 言いかけた男の心臓を、セリーナは撃ち抜いた。
 男達が慌てふためく中、セリーナは一方的に殺し始めた。
 男達の悲鳴の数々を聞きながら、セリーナは無表情で命を奪っていく。
 リーダーもあっさりと殺すと、鮮血に塗れたワンピースの裾を気にしながら、支部を立ち去った。


 時を少し遡る。
 セリーナと別れた後、ヴィアザは一般街の支部に向かった。
 表向きはパブなのか、怪しまれることなく中に入ったヴィアザは、一番目のつく室内の中心で、一人の男を殺した。
 悲鳴と骸がどさりと倒れる音がした。
 それがきっかけで、周囲はパニック状態に陥る。
 パブの二階から、次々に剣を持った男達が出てきた。
 客は見逃して、その男達に対峙する。
「誰だ!」
「名乗りはしない。さっさと殺してやるから、かかってこい」
「ちっ! かかれっ!」
 二列になった男達が突っ込んできた。
「ほう? 恐れずに向かってくるか」
 ヴィアザは眉を上げ、刀を抜いて横に薙いだ。
 二人は首を斬られ、どさりと倒れた。
「さて、どうした? 俺は貴様ら全員を殺さなきゃならない。さっさとしろ」
 怯える男達を前に、苛立ちをあらわにした。
「三人殺したくらいで!」
 感情に任せて一人の男が突っ込んできた。
「それくらいの勢いがないとな」
 ヴィアザの口許には、薄い笑みが浮かんでいた。
 その男の心臓を刺し貫いて、頬にかかった鮮血を気にも留めず、不敵な笑みを浮かべていた。
「ほ、本部へ連絡っ!」
「構わない。後で殺せばいいだけだしな」
「状況、分かってねぇようだな!」
「それはどうかな?」
 ――はあ、面倒だな。連戦だからいつも通りにできないじゃないか。
 ヴィアザはそんなことを思いながら、舌打ちをした。
「おらあっ!」
 右腕で男の剣を受け止めた。
 腕を刺し貫かれたが、本人は一切気にせず、男の首を刎ねた。
 次の男は心臓を刺し貫き、飛び込んできたもう一人の腹を刺し貫いた。
 足で腹を蹴って、強引に刀を引き抜いた。
 腹を刺された男は息をしているものの、満足に動けない。
「さてと」
 ヴィアザは左手に持っていた刀を床に突き刺し、右腕を刺し貫いている剣を、一息で抜き捨てた。
「なっ!」
 男達はその様子を見て、愕然とした。
「もう、言うのも面倒だな。やめだ、やめ」
 ヴィアザは溜息を吐き、左手に刀を持った。右腕からは鮮血がだらだらと滴り落ちるが、本人は気にしていない。
「せめて致命傷くらいは……」
「言うよりも動けよ。バカが」
 言いかけた男との距離を瞬時に詰めると、ヴィアザは言いながら心臓を刺し貫いた。
 鮮血が派手に飛び散った。
 鮮血の滴る刀の切っ先を、まだ生きている男達に向けた。
「どんなことを言って死ぬんだ? 貴様らは」
 ヴィアザは男達との距離を詰めると、囁いた。
「抵抗しないから、命だけはっ!」
「無理だな。……優しさなど、持ち合わせていない」
 ヴィアザは男の心臓を刺し貫きながら呟いた。
 骸から刀を引き抜き、近くにいた男の首を切断した。
 返す刀で、男の胴を切断し、念のため心臓を刺し貫いておく。
「あとは、伝えに向かった男だな……」
 骸を踏み潰しながら、ヴィアザは部屋を見つけた。

 乱暴に開けると、隠れていた男が飛び上がった。
「殺さないでっ!」
「隠れていても無駄だぞ。そこに、いるんだろ?」
 ヴィアザは言うと、木のテーブルを蹴り飛ばした。
「ごほっ!」
 そこには、土埃で()せている男がいた。
「やっぱりか。……忘れていた」
 ヴィアザはその場で身体を反転させ、先ほど叫んだ男の心臓に向かって、懐に隠していた短刀を投げつけた。開きっ放しのドアに激突し、だらだらと鮮血を零しながら息絶えた。
「……よし」
 ヴィアザはその確認をすると、男に向き直った。
 が、突然、剣を手に襲い掛かってきた。
 さっと躱して、腹に蹴りを叩き込んだ。
「ごふっ!」
 男は壁に激突。
「まだ息はある……か」
 ヴィアザは右手で男の胸倉をつかんで持ち上げた。
「がっ……はっ」
 ヴィアザは右手を離し、落下する男の首を正確に斬った。
 鮮血が迸った。
 刀を振り下ろして、ついていた鮮血を殺ぎ落とした。
 鮮血がだらだらと零れるのを感じながら、右手を握り締めた。