ドルガーとジョルジュ、ヨハンネス、グロードジャングスは魔王の城に入った。
ドルガーの目の前には、魔王がいる。
「お前が、勇者ドルガーか」
巨大な玉座に座った、魔王バルジェフ・グダラ・バルモーは、ドルガーたちをにらみつけた。
魔王バルジェフはバカでかい玉座に座っており、体もまるで見上げるようなでかさだ。
ギシイイッ
ミシイッ
魔王が座り直すと、玉座がきしんだ。
魔王は金色の鎧を着ており、肌の色は青かった。腕、胸、腿の筋肉は、恐ろしく鍛上げられていた。
顔はまさに──鬼神、邪神──。
「勇者ヨハンネス、久しぶりだな」
魔王バルジェフはヨハンネスを見た。
「魔王と友人になった勇者は、我が魔族一万年の歴史の中で、お前が初めてだぞ。改めて、我々は呆れているというか……。それで、今日は何の用だったかな?」
「バルジェフ、僕の友人、ドルガー君の力を、ちょいと引き上げてやってくれないかな」
ヨハンネスは軽い口調で言った。
「ドルガー君は、強くなりたいんだってさ」
「ほほう」
魔王バルジェフは、ジロリとドルガーを見た。
真っ赤な獰猛な目だ。見られただけで、喰い殺されてしまいそうだった。
ドルガーとジョルジュは、恐ろしさのあまり、体がブルブル震えた。
「勇者ドルガーとやら。お前……勇者の称号を金で買ったな?」
「ふ、ひっ」
ドルガーは震えながら叫んだ。み、見抜かれているっ!
「そ、そうでしゅ!」
魔王の圧力に負けて、正直に言った。緊張で、呂律がまわていなかった。
「お前からは、剣の実力がそれほど感じられぬ。まあ、我々魔族の闇の力をもってすれば、お前をたちどころに、凄まじい強さの剣士にしてやれるが」
魔王バルジェフは、再び、ドルガーをにらみつけた。
「お前は、我が魔族と契約するのだな? 魔族と契約を結び、一週間に一度、人間の詳細な情報を我々に伝える。それが契約条件だ」
「はっひ……」
ドルガーは変な声を上げたが、ヨハンネスはドルガーを腕でつついた。
「さっさと『はい』と言いなよ。せっかくバルジェフが、君を強くしてくれると言ってくれているんだからさ。ダナン・アンテルドに勝ちたいんだろ?」
「ダナン・アンテルド?」
魔王がそうつぶやき、ピクリと眉を上げたような気がしたが、ドルガーはそれどころではない。
「は、は、はい! お、おっしゃる通りにいたします!」
ドルガーはブンブン首を縦に振った。魔王バルジェフは、ニヤリと笑った。
「よかろう。では、闇の儀式の部屋に連れていけ!」
魔王の使い魔、体の小さいリトルデーモンが五匹も集まってきた。ドルガーをひょいと担ぎ上げる。
「ひゃああ! 殺される!」
「まったく、うるさい人間だなあ。さっさと連れていけ」
案内役の闇幽霊が、呆れて言った。
「待て。我が友、グロードジャングス」
魔王は、ドルガーたちと一緒に行こうとした、大魔導士グロードジャングスに言った。
彼もヨハンネス同様、魔王や魔族と契約を交わした人間である。
「さっき、ドルガーとやらは誰に勝ちたい、と言ったのだ? 少々気になる」
「ダナン・アンテルドという少年です。魔法剣士だそうで」
「……ダナン……アンテルド……。アンテルドだと? その者の持つ剣の名前は?」
「確か、ダナンの持つ剣は──。『グラディウス』という剣だと、ドルガーから聞いております」
「な、何と、グラディウス? 我が父──魔王ジャブラバン・ドスト・エルマスを斬り裂いた聖剣の名ではないか? おい! ……そのダナンという少年の情報を探れ」
「……はっ、御意」
グルードジャングスは深々とお辞儀をした。
◇ ◇ ◇
魔王の城の地下には、無気味な薄暗い祭壇があった。
その祭壇の手前に、真っ赤な液体が入った、池のようなものがある。
「この洗礼池に入っているのは、古代から伝わる、魔族の血のエキスだ」
闇幽霊は言った。
「このエキスに浸かって、念じるのだ」
「そ、そうなると、どうなる?」
ドルガーが聞くと──。
ボチャン
さっきの使い魔の一人に、足蹴りを喰らい、温泉につき落とされた。そしてその使い魔は声を上げた。
「さっさと洗礼を受けろ! ノロマめ! お前は、このエキスを全身に吸収し、強者となるのだ!」
「ぎゃああああああっ!」
ドルガーは叫んだ。す、すさまじい痛みだ。肌に突き刺さるように痛みが、全身に広がる。
「アハハハ!」
勇者ヨハンネスは笑いながら言った。
「これで君は強くなれるよ!」
「人間には、ちょっと強すぎるエキスだからな」
闇幽霊もケラケラ笑いながら言った。
「ふんぎゃあああああ!」
ドルガーは声を上げ続けた。
あわてて真っ赤な池から出ようとすると、使い魔に再び突き落とされる。
「うひいいい!」
そんなこんなで、三十分、ドルガーは魔族のエキスに浸かっていた。
ドルガーの目の前には、魔王がいる。
「お前が、勇者ドルガーか」
巨大な玉座に座った、魔王バルジェフ・グダラ・バルモーは、ドルガーたちをにらみつけた。
魔王バルジェフはバカでかい玉座に座っており、体もまるで見上げるようなでかさだ。
ギシイイッ
ミシイッ
魔王が座り直すと、玉座がきしんだ。
魔王は金色の鎧を着ており、肌の色は青かった。腕、胸、腿の筋肉は、恐ろしく鍛上げられていた。
顔はまさに──鬼神、邪神──。
「勇者ヨハンネス、久しぶりだな」
魔王バルジェフはヨハンネスを見た。
「魔王と友人になった勇者は、我が魔族一万年の歴史の中で、お前が初めてだぞ。改めて、我々は呆れているというか……。それで、今日は何の用だったかな?」
「バルジェフ、僕の友人、ドルガー君の力を、ちょいと引き上げてやってくれないかな」
ヨハンネスは軽い口調で言った。
「ドルガー君は、強くなりたいんだってさ」
「ほほう」
魔王バルジェフは、ジロリとドルガーを見た。
真っ赤な獰猛な目だ。見られただけで、喰い殺されてしまいそうだった。
ドルガーとジョルジュは、恐ろしさのあまり、体がブルブル震えた。
「勇者ドルガーとやら。お前……勇者の称号を金で買ったな?」
「ふ、ひっ」
ドルガーは震えながら叫んだ。み、見抜かれているっ!
「そ、そうでしゅ!」
魔王の圧力に負けて、正直に言った。緊張で、呂律がまわていなかった。
「お前からは、剣の実力がそれほど感じられぬ。まあ、我々魔族の闇の力をもってすれば、お前をたちどころに、凄まじい強さの剣士にしてやれるが」
魔王バルジェフは、再び、ドルガーをにらみつけた。
「お前は、我が魔族と契約するのだな? 魔族と契約を結び、一週間に一度、人間の詳細な情報を我々に伝える。それが契約条件だ」
「はっひ……」
ドルガーは変な声を上げたが、ヨハンネスはドルガーを腕でつついた。
「さっさと『はい』と言いなよ。せっかくバルジェフが、君を強くしてくれると言ってくれているんだからさ。ダナン・アンテルドに勝ちたいんだろ?」
「ダナン・アンテルド?」
魔王がそうつぶやき、ピクリと眉を上げたような気がしたが、ドルガーはそれどころではない。
「は、は、はい! お、おっしゃる通りにいたします!」
ドルガーはブンブン首を縦に振った。魔王バルジェフは、ニヤリと笑った。
「よかろう。では、闇の儀式の部屋に連れていけ!」
魔王の使い魔、体の小さいリトルデーモンが五匹も集まってきた。ドルガーをひょいと担ぎ上げる。
「ひゃああ! 殺される!」
「まったく、うるさい人間だなあ。さっさと連れていけ」
案内役の闇幽霊が、呆れて言った。
「待て。我が友、グロードジャングス」
魔王は、ドルガーたちと一緒に行こうとした、大魔導士グロードジャングスに言った。
彼もヨハンネス同様、魔王や魔族と契約を交わした人間である。
「さっき、ドルガーとやらは誰に勝ちたい、と言ったのだ? 少々気になる」
「ダナン・アンテルドという少年です。魔法剣士だそうで」
「……ダナン……アンテルド……。アンテルドだと? その者の持つ剣の名前は?」
「確か、ダナンの持つ剣は──。『グラディウス』という剣だと、ドルガーから聞いております」
「な、何と、グラディウス? 我が父──魔王ジャブラバン・ドスト・エルマスを斬り裂いた聖剣の名ではないか? おい! ……そのダナンという少年の情報を探れ」
「……はっ、御意」
グルードジャングスは深々とお辞儀をした。
◇ ◇ ◇
魔王の城の地下には、無気味な薄暗い祭壇があった。
その祭壇の手前に、真っ赤な液体が入った、池のようなものがある。
「この洗礼池に入っているのは、古代から伝わる、魔族の血のエキスだ」
闇幽霊は言った。
「このエキスに浸かって、念じるのだ」
「そ、そうなると、どうなる?」
ドルガーが聞くと──。
ボチャン
さっきの使い魔の一人に、足蹴りを喰らい、温泉につき落とされた。そしてその使い魔は声を上げた。
「さっさと洗礼を受けろ! ノロマめ! お前は、このエキスを全身に吸収し、強者となるのだ!」
「ぎゃああああああっ!」
ドルガーは叫んだ。す、すさまじい痛みだ。肌に突き刺さるように痛みが、全身に広がる。
「アハハハ!」
勇者ヨハンネスは笑いながら言った。
「これで君は強くなれるよ!」
「人間には、ちょっと強すぎるエキスだからな」
闇幽霊もケラケラ笑いながら言った。
「ふんぎゃあああああ!」
ドルガーは声を上げ続けた。
あわてて真っ赤な池から出ようとすると、使い魔に再び突き落とされる。
「うひいいい!」
そんなこんなで、三十分、ドルガーは魔族のエキスに浸かっていた。