酒場での大喧嘩──。
ゲルドンのパーティーメンバーであり、一番弟子のクオリファは、ドルバースに向かって横蹴りを見舞った。
ドルバースは、酒場の壁に激突!
「ぐ、や、やるじゃねえか……」
ドルバースは、胸をおさえながら言った。頭は壁に打っていない。大丈夫だ。
クオリファは笑って、拳の骨をポキポキならしている。
「いやぁ、さっきからこのホビット、ムカついてたんスよね。俺の先生が本気出してないからって、色々してくれちゃってさ」
するとホビット族のドルバースはクスクスと笑った。
「この大勇者が、本気を出してないって? ケンカに負けちゃおしまいだろ?」
「……ああ。ケンカに負けちゃおしまいだよなあ。クオリファ、代わってくれや……と、その前に!」
ガッ
ゲルドンはいきなり、ドルバースに掴みかかった。
「おっ、お前! 弟子に代わるんじゃなかったのか」
ドルバースは油断していた。そして、床に倒され、馬乗りの状態になった。この状態は、ケンカでいえば、「超危険」を示す。
つまり、ゲルドンが有利の体勢なのだ。ここから上からのパンチの雨あられに移行できるからだ。
「くっ、汚ねえヤツらだ!」
ドルバースはあわてて逃げ出そうと、馬乗りの状態から、もがいて逃げようとした。
「くっ!」
ゲルドンはクオリファに目で合図する。するとクオリファは、何と──。
ドガッ
横から、ゲルドンに馬乗りされているドルバースの腕を蹴っ飛ばしたのだ!
「う、が!」
ガスッ
クオリファは、もう一発、腕を蹴る! ドルバースは、苦痛に顔をゆがめる。
なんだ、何が起こっているんだ? 野次馬たちは、この状況を呆然と見ていた。
2対1……! 大勇者ゲルドンとクオリファが、一方的にホビット族のドルバースを叩きのめそうとしている。2人がかりで、1人を……!
なんなんだ、これは?
「一方的な暴力じゃないか」
野次馬の誰かが言った。その通りだった。
野次馬たちは困惑していた。これは2対1の構図だ。これはケンカじゃない。一方的な暴力になりつつある。
そして、クオリファは隙あらば、上から蹴りを落とそうとしている。
一方、ゲルドンといえば、ドルバースの上からパンチをガシガシ当てにいった。ドルバースは肘や腕で、ゲルドンの馬乗りパンチを必死に防いでいる。しかし──。
ガスッ
ガスッ
ゲスッ
「う、うおおっ……」
「やべえ」
野次馬たちは声を上げる。
ドルバースは腕を使い、ゲルドンの強引な──力任せな馬乗りパンチを防いでいた。しかし、やがて頬や額にパンチが当たりだした。
ドルバースは防御するための腕を負傷したらしく、もう防戦一方だ。逃げるスタミナも、もう残ってなさそうだった。
ドルバースは小さく言った。
「う、ま、まい……っ」
「あ? 聞こえねーよ!」
「う、ま、まいった、ゆ、ゆるしてくれ」
ドルバースはあわてて、懇願した。
おおおおっ!
野次馬たちは声を上げる。しかし、何だかスッキリしないケンカだ。勝負というよりは、何か嫌なものを見せつけられたような──。
ゲルドンは弟子の力を借りた。2人で、あの小柄なホビットを叩きのめしたのだ……。
「負けを認めたな。それでいいんだよ、クソ野郎」
大勇者ゲルドンはニヤッと笑って、馬乗り体勢から立ち上がった。
そして、弟子のクオリファとハイタッチだ。
「俺ら、最強だな!」
「そうっスね!」
「ケンカは、勝たなきゃダメなんだよな!」
「その通りッス!」
ゲルドンとクオリファは満足顔だ。しかし、野次馬たちの目は冷たい。
ドルバースは、酒場の店員の手で、すぐに近くの診療所にかつぎこまれた。さっきのクオリファの蹴りで、腕が折れたらしい。
「きたねえよ……二人がかりで……」
「なんなんだ、あの大勇者とあの弟子は」
「大勇者ってあんなヤツなのか?」
野次馬たちは眉をひそめて、ゲルドンを見やった。それを聞いたゲルドンは、「うるせえんだよ!」と怒鳴った。
「ケンカは勝ちゃいいんだろうが! ハハハ! 記念に祝杯だ! クオリファ、ビールをもってこい!」
「わかりましたっ!」
野次馬たちは、悪びれず勝手に祝杯をあげているゲルドンたちを、冷ややかな目で見やっていた。
ゲルドンのパーティーメンバーであり、一番弟子のクオリファは、ドルバースに向かって横蹴りを見舞った。
ドルバースは、酒場の壁に激突!
「ぐ、や、やるじゃねえか……」
ドルバースは、胸をおさえながら言った。頭は壁に打っていない。大丈夫だ。
クオリファは笑って、拳の骨をポキポキならしている。
「いやぁ、さっきからこのホビット、ムカついてたんスよね。俺の先生が本気出してないからって、色々してくれちゃってさ」
するとホビット族のドルバースはクスクスと笑った。
「この大勇者が、本気を出してないって? ケンカに負けちゃおしまいだろ?」
「……ああ。ケンカに負けちゃおしまいだよなあ。クオリファ、代わってくれや……と、その前に!」
ガッ
ゲルドンはいきなり、ドルバースに掴みかかった。
「おっ、お前! 弟子に代わるんじゃなかったのか」
ドルバースは油断していた。そして、床に倒され、馬乗りの状態になった。この状態は、ケンカでいえば、「超危険」を示す。
つまり、ゲルドンが有利の体勢なのだ。ここから上からのパンチの雨あられに移行できるからだ。
「くっ、汚ねえヤツらだ!」
ドルバースはあわてて逃げ出そうと、馬乗りの状態から、もがいて逃げようとした。
「くっ!」
ゲルドンはクオリファに目で合図する。するとクオリファは、何と──。
ドガッ
横から、ゲルドンに馬乗りされているドルバースの腕を蹴っ飛ばしたのだ!
「う、が!」
ガスッ
クオリファは、もう一発、腕を蹴る! ドルバースは、苦痛に顔をゆがめる。
なんだ、何が起こっているんだ? 野次馬たちは、この状況を呆然と見ていた。
2対1……! 大勇者ゲルドンとクオリファが、一方的にホビット族のドルバースを叩きのめそうとしている。2人がかりで、1人を……!
なんなんだ、これは?
「一方的な暴力じゃないか」
野次馬の誰かが言った。その通りだった。
野次馬たちは困惑していた。これは2対1の構図だ。これはケンカじゃない。一方的な暴力になりつつある。
そして、クオリファは隙あらば、上から蹴りを落とそうとしている。
一方、ゲルドンといえば、ドルバースの上からパンチをガシガシ当てにいった。ドルバースは肘や腕で、ゲルドンの馬乗りパンチを必死に防いでいる。しかし──。
ガスッ
ガスッ
ゲスッ
「う、うおおっ……」
「やべえ」
野次馬たちは声を上げる。
ドルバースは腕を使い、ゲルドンの強引な──力任せな馬乗りパンチを防いでいた。しかし、やがて頬や額にパンチが当たりだした。
ドルバースは防御するための腕を負傷したらしく、もう防戦一方だ。逃げるスタミナも、もう残ってなさそうだった。
ドルバースは小さく言った。
「う、ま、まい……っ」
「あ? 聞こえねーよ!」
「う、ま、まいった、ゆ、ゆるしてくれ」
ドルバースはあわてて、懇願した。
おおおおっ!
野次馬たちは声を上げる。しかし、何だかスッキリしないケンカだ。勝負というよりは、何か嫌なものを見せつけられたような──。
ゲルドンは弟子の力を借りた。2人で、あの小柄なホビットを叩きのめしたのだ……。
「負けを認めたな。それでいいんだよ、クソ野郎」
大勇者ゲルドンはニヤッと笑って、馬乗り体勢から立ち上がった。
そして、弟子のクオリファとハイタッチだ。
「俺ら、最強だな!」
「そうっスね!」
「ケンカは、勝たなきゃダメなんだよな!」
「その通りッス!」
ゲルドンとクオリファは満足顔だ。しかし、野次馬たちの目は冷たい。
ドルバースは、酒場の店員の手で、すぐに近くの診療所にかつぎこまれた。さっきのクオリファの蹴りで、腕が折れたらしい。
「きたねえよ……二人がかりで……」
「なんなんだ、あの大勇者とあの弟子は」
「大勇者ってあんなヤツなのか?」
野次馬たちは眉をひそめて、ゲルドンを見やった。それを聞いたゲルドンは、「うるせえんだよ!」と怒鳴った。
「ケンカは勝ちゃいいんだろうが! ハハハ! 記念に祝杯だ! クオリファ、ビールをもってこい!」
「わかりましたっ!」
野次馬たちは、悪びれず勝手に祝杯をあげているゲルドンたちを、冷ややかな目で見やっていた。