机の上に置きっぱなしになっていた台本をぱらぱらとめくっていれば、ぐう、とお腹が鳴った。何か食べるものはあっただろうかとキッチンに向かい、戸棚からカップラーメンを取り出した。普段全く料理をしないから冷蔵庫はほぼ空だ。
カップラーメンにお湯を注ぎ、台本を読みながら三分待つ。台本を読みふけっていれば三分が経っていて、蓋を開けると麺は少し伸びていた。前カップラーメンを食べたときも麺を伸ばした気がする。
ふーふーと息を吹きかけて麺を冷ます。一口食べれば、カップラーメンらしい味がした。どことなくインスタントな、そんな味。久しぶりに食べるカップラーメンは美味しくて、あっという間に食べ終えた。
片付けを済ませると風呂が沸いた。疲れたからすぐ風呂に入り、もう寝ることにする。
脱衣所で服を脱ぎ、頭と身体を洗い、湯船につかる。ゆらゆらと揺れる水面に、今日見た夢のことを思い出した。あの夢は何だったんだろう。
光に包まれた、温かい夢――。何かがあるわけでも、何かができるわけでもない、そんな場所。それなのに、心が落ち着いて、どこか懐かしさを感じる。暖かさが、そこにある。
湯船から立ち上がり、風呂場の鏡に映った自分を見た。
悲しそうな、暗い顔をした青年が、俺を見つめていた。
明日のスケジュールと、撮影するシーンの台本を確認してからベッドに入る。横になって身体の力を抜いた瞬間すぐに睡魔が襲ってくる。
またあの夢を見たい。そう思った瞬間、身体の感覚が消え始めた。これは暗い夢を見るときの前兆。
あの明るい夢を見たとき、もしかしたらと思った。もしかしたら、もう暗い夢を見なくて済むんじゃないかと。口では一生こうでもいいと言ったものの、本心は嫌だった。
俺だって好きでこんな夢を見ているんじゃない。叶うのなら、明るくて幸せな夢を見たい。
身体の感覚が消え、深く深くに潜っていく。深くて暗い、夢の中に。
夢へ落ちていくような感覚も薄れていった。きっと、暗い夢なんだろう。目を開けたいようで開けたくない。
でも、もしかしたら――明るい夢なのかもしれない。俺は一抹の望みに賭け、俺は目を開けた。そして視界に広がった光景を見て、俺は息をのんだ。
そこには、街のような風景が広がっていた。一体どこなのだろう。撮影で数々の場所を回ってきたけれど、この風景は見たことがない。
美しい建物、清らかに流れる川、どこまでも続く青空。すべてが常世離れした雰囲気を持っている。
その景観に見とれていると、誰かの足音が聞こえた。
「――ねぇ」
柔らかくて、優しくて、あたたかくて――それでいてふわふわとしていて、すぐに消えていきそうなほどに儚い――そんな声が、俺を呼んだ。
「おにーさん、ひとり?」
その声の尻尾を、掴んだとき。
俺とキミは、確かに出会った。
カップラーメンにお湯を注ぎ、台本を読みながら三分待つ。台本を読みふけっていれば三分が経っていて、蓋を開けると麺は少し伸びていた。前カップラーメンを食べたときも麺を伸ばした気がする。
ふーふーと息を吹きかけて麺を冷ます。一口食べれば、カップラーメンらしい味がした。どことなくインスタントな、そんな味。久しぶりに食べるカップラーメンは美味しくて、あっという間に食べ終えた。
片付けを済ませると風呂が沸いた。疲れたからすぐ風呂に入り、もう寝ることにする。
脱衣所で服を脱ぎ、頭と身体を洗い、湯船につかる。ゆらゆらと揺れる水面に、今日見た夢のことを思い出した。あの夢は何だったんだろう。
光に包まれた、温かい夢――。何かがあるわけでも、何かができるわけでもない、そんな場所。それなのに、心が落ち着いて、どこか懐かしさを感じる。暖かさが、そこにある。
湯船から立ち上がり、風呂場の鏡に映った自分を見た。
悲しそうな、暗い顔をした青年が、俺を見つめていた。
明日のスケジュールと、撮影するシーンの台本を確認してからベッドに入る。横になって身体の力を抜いた瞬間すぐに睡魔が襲ってくる。
またあの夢を見たい。そう思った瞬間、身体の感覚が消え始めた。これは暗い夢を見るときの前兆。
あの明るい夢を見たとき、もしかしたらと思った。もしかしたら、もう暗い夢を見なくて済むんじゃないかと。口では一生こうでもいいと言ったものの、本心は嫌だった。
俺だって好きでこんな夢を見ているんじゃない。叶うのなら、明るくて幸せな夢を見たい。
身体の感覚が消え、深く深くに潜っていく。深くて暗い、夢の中に。
夢へ落ちていくような感覚も薄れていった。きっと、暗い夢なんだろう。目を開けたいようで開けたくない。
でも、もしかしたら――明るい夢なのかもしれない。俺は一抹の望みに賭け、俺は目を開けた。そして視界に広がった光景を見て、俺は息をのんだ。
そこには、街のような風景が広がっていた。一体どこなのだろう。撮影で数々の場所を回ってきたけれど、この風景は見たことがない。
美しい建物、清らかに流れる川、どこまでも続く青空。すべてが常世離れした雰囲気を持っている。
その景観に見とれていると、誰かの足音が聞こえた。
「――ねぇ」
柔らかくて、優しくて、あたたかくて――それでいてふわふわとしていて、すぐに消えていきそうなほどに儚い――そんな声が、俺を呼んだ。
「おにーさん、ひとり?」
その声の尻尾を、掴んだとき。
俺とキミは、確かに出会った。