ここはグラントール王立競技場。
「グラントール王国学生魔導体術個人戦トーナメント」二回戦の日がやってきてしまった。
僕、レイジ・ターゼットはあの強敵、グローバス・ダイラントと闘う。競技場の観客席は超満員だ。この学生トーナメントは、グラントール王国国民のほとんどが注目している行事だ。
すでにリング上には、グローバスが上がっている。
「グローバス、レイジをぶっ倒せ!」
「レイジなんて、たいしたことねーぞ!」
バルフェス学院の生徒たちも、観客席から歓声を送っている。一般人からの歓声も大きい。デルゲス・ダイラントの長男、ということで、知名度もあるのだろう。
「レイジ! お前の方が強いぞ! ……多分!」
「相手は強そうだけど、がんばれよ~!」
僕は我がエースリート学院の生徒たちの声援を背に受けながら、試合用リングに上がった。グローバスへの声援よりも、ちょっと圧が弱いのはなんでだ……。
セコンドについてくれたアリサは、リング下から叫んだ。
「レイジ! 練習通りにやれば勝てるよ!」
アリサの言葉を聞いたグローバスは、クスクス笑った。
「おいレイジ、セコンドのヤツが何か言ってるぜ。お前が誰に勝てるってんだ? 俺様か?」
僕は黙って試合開始のゴングを待っていた。グローバスは続ける。
「1000%、俺様が勝つ。お前が勝つのが想像できないぜ。レイジよ、お前、どうやって俺に勝つつもりだ?」
試合開始のゴングが鳴った。
──何と、グローバスは腕組をして立っているだけだ。構え──防御の姿勢などまったくとらない。
僕は飛び込んだ。そしていきなり、右ストレートをグローバスのアゴに叩き込んでやった。
しかし、グローバスは一瞬、膝が崩れただけで、ほとんど効いたそぶりを見せない。
きっと、首を恐ろしく鍛えているのだ。だから、パンチが効かない。いや、そもそも首をアゴが頑丈に出来ているのだろうか? それにしても異常な打たれ強さだ。一体、どうなっている?
しかし、今の僕には、別の秘策がある!
「レイジ、アゴは効かないよ!」
アリサが声を上げている。僕はうなずき、グローバスの腹に攻撃の焦点を絞ることにした。僕はすぐに回り込み、彼の横腹にボディーブローを叩き込んだ。
しかし、彼はそれを防がない。横腹の攻撃は当たったはずだ。それどころか──。
ブン
右フックが飛んできた。
僕はリングを転がって避けた。風圧が頭の上を通りすぎる。恐ろしいパンチだな。当たったら死ぬだろう。
「やるじゃねえかよ」
グローバスは笑って言った。
「だが、俺の武器はこれだけじゃない」
グローバスは右前蹴りを繰り出した。僕は蹴りを受け、吹き飛んだ。今度は左前蹴りが飛んできた。僕はリング上のコーナーポストまで吹っ飛んだ。
ふう、たいした威力だ。
「ガハハハ!」
グローバスは笑った。
「お前は軽いから、人形のように、よく吹っ飛ぶぜ!」
違う。僕は、彼の攻撃の衝撃を弱めるために、自分で後ろに飛んだのだ。
すぐに僕は、彼の近くに走り込んだ。
「おいおい、俺には攻撃が効かないってのが、分かっているんだろうが!」
グローバスはまだ余裕の腕組みをしている。しかし、僕の狙いは、打撃ではなかった。
素早くグローバスの足元に近づき、彼の両足を両腕で抱えた。
「ん? おい。何してる」
僕はグローバスの両足を両腕で抱えながら、彼の脇腹を、自分の側頭部と肩で押した。
ウオオオオッ
観客席から歓声が上がる。グローバスはバランスを崩し、「お、おお?」と声を上げながら、ドタン! とリング上に転がってしまった。これは、ケビンから教わった、「両足タックル」だ!
相手の両足を両腕で抱え、自分の側頭部と肩で押すと、相手を簡単に倒すことができる。これは体重の軽い僕でも可能だった。
僕とグローバスは倒れた。僕はすぐに彼の足を掴んだ。そしてすぐに彼のアキレス腱を、自分の手首の骨で圧迫した。「アキレス腱固め」だ!
「お前……! くそおおおっ! 関節技か!」
グローバスは叫び、仰向けになりながら逃げようとする。しかし、僕は彼の右膝の上を、自分の両足でクロスさせて、逃げられないように固定した。
それにしても、まるでトロールの棍棒のような足だ。恐ろしく太い。
「うがああああっ」
彼は寝転びながら叫んでいる。事前情報によると、グローバスは打撃は化け物のように強いが、寝技をまったく知らないと分かった。僕やルイーズ学院長、ケビンは、この一週間、グローバスを寝技や関節技で攻めたら良いのではないか、と考えていた。
僕はてこの原理を用い、手首の骨で彼のアキレス腱を完全に極めた。
「いででででで!」
グローバスは横になって逃げようとする。無理だ。絶対に逃げられない。僕は両足で、彼の右足を固定しているからだ。逃がすものか!
「ぐおおおおーっ!」
彼はすさまじい声を上げた。おもいっきり暴れはじめたのだ。何とかして、関節技から抜け出そうと体をひねる。
龍のようにすさまじい力だ。しかも足が恐ろしく太い。
(あっ!)
彼の足は、僕の手から離れてしまった。
僕もグローバスも、立ち上がった。グローバスはヨロヨロと足を引きずっている。
そして──僕を驚きの表情で見て言った。
「お、お前……何なんだ? 何でそんなに強いんだ?」
グローバスは僕に向かって、つぶやいた。
(グローバス、あんただってな)
僕もそう心の中で言った。
やはり勝負は打撃で決まるのか? 警戒したグローバスに、もう関節技をかけるチャンスはないだろう。しかし、彼には何故か、打撃が効かないのだ。
さーて、どうするか……。
僕は、冷や汗をかいているグローバスを注意深く見やった。
(……彼の打たれ強さの秘密、必ず解かなければならない!)
「グラントール王国学生魔導体術個人戦トーナメント」二回戦の日がやってきてしまった。
僕、レイジ・ターゼットはあの強敵、グローバス・ダイラントと闘う。競技場の観客席は超満員だ。この学生トーナメントは、グラントール王国国民のほとんどが注目している行事だ。
すでにリング上には、グローバスが上がっている。
「グローバス、レイジをぶっ倒せ!」
「レイジなんて、たいしたことねーぞ!」
バルフェス学院の生徒たちも、観客席から歓声を送っている。一般人からの歓声も大きい。デルゲス・ダイラントの長男、ということで、知名度もあるのだろう。
「レイジ! お前の方が強いぞ! ……多分!」
「相手は強そうだけど、がんばれよ~!」
僕は我がエースリート学院の生徒たちの声援を背に受けながら、試合用リングに上がった。グローバスへの声援よりも、ちょっと圧が弱いのはなんでだ……。
セコンドについてくれたアリサは、リング下から叫んだ。
「レイジ! 練習通りにやれば勝てるよ!」
アリサの言葉を聞いたグローバスは、クスクス笑った。
「おいレイジ、セコンドのヤツが何か言ってるぜ。お前が誰に勝てるってんだ? 俺様か?」
僕は黙って試合開始のゴングを待っていた。グローバスは続ける。
「1000%、俺様が勝つ。お前が勝つのが想像できないぜ。レイジよ、お前、どうやって俺に勝つつもりだ?」
試合開始のゴングが鳴った。
──何と、グローバスは腕組をして立っているだけだ。構え──防御の姿勢などまったくとらない。
僕は飛び込んだ。そしていきなり、右ストレートをグローバスのアゴに叩き込んでやった。
しかし、グローバスは一瞬、膝が崩れただけで、ほとんど効いたそぶりを見せない。
きっと、首を恐ろしく鍛えているのだ。だから、パンチが効かない。いや、そもそも首をアゴが頑丈に出来ているのだろうか? それにしても異常な打たれ強さだ。一体、どうなっている?
しかし、今の僕には、別の秘策がある!
「レイジ、アゴは効かないよ!」
アリサが声を上げている。僕はうなずき、グローバスの腹に攻撃の焦点を絞ることにした。僕はすぐに回り込み、彼の横腹にボディーブローを叩き込んだ。
しかし、彼はそれを防がない。横腹の攻撃は当たったはずだ。それどころか──。
ブン
右フックが飛んできた。
僕はリングを転がって避けた。風圧が頭の上を通りすぎる。恐ろしいパンチだな。当たったら死ぬだろう。
「やるじゃねえかよ」
グローバスは笑って言った。
「だが、俺の武器はこれだけじゃない」
グローバスは右前蹴りを繰り出した。僕は蹴りを受け、吹き飛んだ。今度は左前蹴りが飛んできた。僕はリング上のコーナーポストまで吹っ飛んだ。
ふう、たいした威力だ。
「ガハハハ!」
グローバスは笑った。
「お前は軽いから、人形のように、よく吹っ飛ぶぜ!」
違う。僕は、彼の攻撃の衝撃を弱めるために、自分で後ろに飛んだのだ。
すぐに僕は、彼の近くに走り込んだ。
「おいおい、俺には攻撃が効かないってのが、分かっているんだろうが!」
グローバスはまだ余裕の腕組みをしている。しかし、僕の狙いは、打撃ではなかった。
素早くグローバスの足元に近づき、彼の両足を両腕で抱えた。
「ん? おい。何してる」
僕はグローバスの両足を両腕で抱えながら、彼の脇腹を、自分の側頭部と肩で押した。
ウオオオオッ
観客席から歓声が上がる。グローバスはバランスを崩し、「お、おお?」と声を上げながら、ドタン! とリング上に転がってしまった。これは、ケビンから教わった、「両足タックル」だ!
相手の両足を両腕で抱え、自分の側頭部と肩で押すと、相手を簡単に倒すことができる。これは体重の軽い僕でも可能だった。
僕とグローバスは倒れた。僕はすぐに彼の足を掴んだ。そしてすぐに彼のアキレス腱を、自分の手首の骨で圧迫した。「アキレス腱固め」だ!
「お前……! くそおおおっ! 関節技か!」
グローバスは叫び、仰向けになりながら逃げようとする。しかし、僕は彼の右膝の上を、自分の両足でクロスさせて、逃げられないように固定した。
それにしても、まるでトロールの棍棒のような足だ。恐ろしく太い。
「うがああああっ」
彼は寝転びながら叫んでいる。事前情報によると、グローバスは打撃は化け物のように強いが、寝技をまったく知らないと分かった。僕やルイーズ学院長、ケビンは、この一週間、グローバスを寝技や関節技で攻めたら良いのではないか、と考えていた。
僕はてこの原理を用い、手首の骨で彼のアキレス腱を完全に極めた。
「いででででで!」
グローバスは横になって逃げようとする。無理だ。絶対に逃げられない。僕は両足で、彼の右足を固定しているからだ。逃がすものか!
「ぐおおおおーっ!」
彼はすさまじい声を上げた。おもいっきり暴れはじめたのだ。何とかして、関節技から抜け出そうと体をひねる。
龍のようにすさまじい力だ。しかも足が恐ろしく太い。
(あっ!)
彼の足は、僕の手から離れてしまった。
僕もグローバスも、立ち上がった。グローバスはヨロヨロと足を引きずっている。
そして──僕を驚きの表情で見て言った。
「お、お前……何なんだ? 何でそんなに強いんだ?」
グローバスは僕に向かって、つぶやいた。
(グローバス、あんただってな)
僕もそう心の中で言った。
やはり勝負は打撃で決まるのか? 警戒したグローバスに、もう関節技をかけるチャンスはないだろう。しかし、彼には何故か、打撃が効かないのだ。
さーて、どうするか……。
僕は、冷や汗をかいているグローバスを注意深く見やった。
(……彼の打たれ強さの秘密、必ず解かなければならない!)