何がどうなったのかわからないのだけれど。
私――野村和美は、目を覚ますとお城のような部屋にいた。
(私の部屋じゃない。でも、なんだか見覚えが……)
ベッドから滑り降り、鏡をのぞく。
そこに映っていたのは、発売を心待ちにしていた乙女ゲーム『精霊の導き手』に出てくる、ライバル令嬢ダイアナだった。
(私が、ダイアナに!? これってゲームの世界に転生ってやつ!?)
いわゆる「悪役令嬢」とは異なり、ダイアナは主人公にとって親友だ。
ただし、「精霊の導き手」の座をめぐる勝負や、恋のさや当てに関しては強力なライバルでもある。
(ダイアナをプレイアブルキャラにして、この世界を楽しめるんだ!)
ゲームプレイヤーとしては、当然ながら主人公ステラを自分の分身として認識していた。
けれど実はファッションなどに関しては、ダイアナの方が私のセンスに近い。
(共感できるキャラでこの世界を楽しめるなんて最高!)
私は気合を入れる。
(よぉし、この世界で『精霊の導き手』の座も、男たちのハートも手に入れちゃうぞ! ステラ、ライバルとして容赦しないからね!)
このゲームをプレイするのは初めてだが、私はこれまで乙女ゲーを100本はクリアしている。
どのように進めれば勝てるかは、大体の予想がつく。
(ふふふ、攻略キャラ、まとめて全員落としちゃうぞー!)
■□■
「……完全に炎上ですね」
ゲーム「精霊の導き手」開発チームのオフィスでは、社員たちが頭を抱えていた。
・何をしてもどんな選択をしても、主人公がライバルに勝てない
・ゲームバランス悪すぎ、クソゲー
・これ、ちゃんとテストプレイした? プレイヤーを楽しませる気0
・攻略キャラ、グラフィックも声もいいのに、全部ダイアナが攫って行く。ビッチ。
・あんなクソ女にデレデレしてる男とか、全員いらんわ。
・ダイアナうざ。こっちのコマンドが100%成功でも、絶対にダイアナが勝つの何?
・私はときめきたくてこのゲーム買ったの! 攻略キャラ全部ダイアナに奪われて、ストレスしかないんだが!?
SNSに並ぶ『精霊の導き手』ユーザーからの批判、批判、批判。
「なぜだ! テストプレイは十分な時間を取って行なった! プレイヤーが楽しめるよう、ライバルの力も調整したはずだ! なのにどうして、こんなことになってるんだ……!!」
■□■
伝説のクソゲーとまで言われるようになった『精霊の導き手』は、安売りワゴンの常連となり、やがて大量廃棄に至る。
開発会社はいつしかその存在を消した。
それに伴い『精霊の導き手』の世界もきっと――
――完――
私――野村和美は、目を覚ますとお城のような部屋にいた。
(私の部屋じゃない。でも、なんだか見覚えが……)
ベッドから滑り降り、鏡をのぞく。
そこに映っていたのは、発売を心待ちにしていた乙女ゲーム『精霊の導き手』に出てくる、ライバル令嬢ダイアナだった。
(私が、ダイアナに!? これってゲームの世界に転生ってやつ!?)
いわゆる「悪役令嬢」とは異なり、ダイアナは主人公にとって親友だ。
ただし、「精霊の導き手」の座をめぐる勝負や、恋のさや当てに関しては強力なライバルでもある。
(ダイアナをプレイアブルキャラにして、この世界を楽しめるんだ!)
ゲームプレイヤーとしては、当然ながら主人公ステラを自分の分身として認識していた。
けれど実はファッションなどに関しては、ダイアナの方が私のセンスに近い。
(共感できるキャラでこの世界を楽しめるなんて最高!)
私は気合を入れる。
(よぉし、この世界で『精霊の導き手』の座も、男たちのハートも手に入れちゃうぞ! ステラ、ライバルとして容赦しないからね!)
このゲームをプレイするのは初めてだが、私はこれまで乙女ゲーを100本はクリアしている。
どのように進めれば勝てるかは、大体の予想がつく。
(ふふふ、攻略キャラ、まとめて全員落としちゃうぞー!)
■□■
「……完全に炎上ですね」
ゲーム「精霊の導き手」開発チームのオフィスでは、社員たちが頭を抱えていた。
・何をしてもどんな選択をしても、主人公がライバルに勝てない
・ゲームバランス悪すぎ、クソゲー
・これ、ちゃんとテストプレイした? プレイヤーを楽しませる気0
・攻略キャラ、グラフィックも声もいいのに、全部ダイアナが攫って行く。ビッチ。
・あんなクソ女にデレデレしてる男とか、全員いらんわ。
・ダイアナうざ。こっちのコマンドが100%成功でも、絶対にダイアナが勝つの何?
・私はときめきたくてこのゲーム買ったの! 攻略キャラ全部ダイアナに奪われて、ストレスしかないんだが!?
SNSに並ぶ『精霊の導き手』ユーザーからの批判、批判、批判。
「なぜだ! テストプレイは十分な時間を取って行なった! プレイヤーが楽しめるよう、ライバルの力も調整したはずだ! なのにどうして、こんなことになってるんだ……!!」
■□■
伝説のクソゲーとまで言われるようになった『精霊の導き手』は、安売りワゴンの常連となり、やがて大量廃棄に至る。
開発会社はいつしかその存在を消した。
それに伴い『精霊の導き手』の世界もきっと――
――完――