時雨くんの勉強机の上に置かれていたのは、鏡と時雨くんが読んでいた本。
一応、儀式や占いをする時の礼装を着て来たけど、、、時戻しってどうするんだろう?
全身を覆い隠すような白色の服に金色の細かい刺繍が施されている。
「真央さんのその服装を見ていると、まるで天使が降り立ったような感じがしますね」
兄さまの礼装は色違いの黒色。
「は?真央が天使級な可愛さなのは当たり前だろ」
「あ、師匠。こんにちは」
「、、、」
「すみません」
確かに、この礼装って天使をモチーフにしているのかな?よく分からない。

「師匠が生きていた時の写真って、ありますか?」
「うん」
鞄から私と兄さまが写っている写真を取り出す。兄さまは写真が嫌いだから、あまり写っているのは見付からなかった。小学校の入学式とお誕生日の写真しかなかった。
「師匠のこんな笑顔見るの初めてです」
十歳のお誕生日の写真を見ながら時雨くんは言った。「そう思うと真央さんと師匠って、鏡写しみたいにそっくりですね。違うのは、、、髪型と服装くらいでしょうか」
「小さい頃はよく、入れ替えっこして遊んでたんだよ」
「似ているから出来る遊びですね。見分けられる自信がないです、、、」
『両親も見分けられなかったからな』

写真を洗面器に張った水に浮かばせ、時雨くんが何かブツブツ言っている。
「鏡を通して過去に干渉します」
その言葉に静かに頷いた。お守りを握り締め、大丈夫と自分に言い聞かせて、落ち着かせる。
そして、あの日のことを明確に思い出す。
明確に思い出せばその分、安定に過去に干渉出来るらしい。