花氷の琥珀糖

「兄さまは好きな人っているの?」
『いる』
「そっか、、、そうだよね、、、」
 私も兄さまも、もう子供じゃないのだ。恋愛だってするし、、、兄さまは死者で長く側にいられる訳でもない。
何時か別れなくちゃいけないのかな、、、。
「兄さまは、何時まで一緒にいてくれるの?」
『、、、』
「お願いだから、、、一人に、しないで、、、」
 視界がぼやける。涙のせいなのか眠たいからなのか分からない。
『一人にはしない。ずっと一緒にいるよ』
「うっ、、、うっ、、、で、でも」
 涙の雨が枕に染み込む。
嫌だ、、、兄さまと離れたくない。
『何時まで経っても泣き虫なのは変わらないな』
少し笑ったような気がした。でも、本当の表情は分からない。
「兄さま、好きだよ、、、」
 ずっとずっと、一緒にいた。
 誰よりも側にいてくれた。
『、、、っ!!』

 そういえば兄さまは雷が怖いって言って、大雨の日は手を繋いでってお願いしてきて、、、。
『真央、手を繋いでよ』
『兄さまの怖がり〜!もう五年生なのに雷が怖いの?』
『良いから。手、貸して』
 これが最後の会話になるなんて、あの時は想像もしていなかった。
もう十歳になるのに雷が怖いって言って、、、違う。
雷が怖かったのは、、、私の方だ。

「あれ、、、寝ちゃってた?」
 いつの間にか寝落ちしていた。
「兄さま!おはよ〜!」
『え、、、あ、おはよ』
「時雨くん、大丈夫かな?」
『さ、さぁ』
(どうしたんだろう?ぎこちない感じ、、、)
会話があまり続かない。
気になっても仕方ないので制服に着替えて学校へ向かった。