時雨は意外にもあっさり真央に指輪を渡してくれた。
(あんなに嫌がっていたのに、、、。やっぱり強力な憑き物が指輪に憑依している可能性があるって聞いて、怖くなったのかな?)
「ところで真央さん、この後なんだけど、、、」
「この後?」
 真央は不思議に思い、時雨を見上げる。時雨の手が伸びてきて、真央の肩に触れたその時、異変が起きた。
―――バチン!
 弾くような音と共に、時雨の体が崩れ落ちる。そのまま床に両膝をついて、項垂(うなだ)れるような格好になった。
「え、、、時雨くん?時雨くん!」
突然倒れた時雨に、真央は驚いた。
(どうしよう、、、体調不良かな?)
しゃがみ込んで顔色を覗くと、明らかに顔色が悪い。額にはびっしりと脂汗が出ていた。
「時雨くん?大丈夫!?」
 真央は必死に声をかけるけど、時雨は答えない。意識はあるようだが声が出せない程、体調が悪いのかもしれない。
(貧血?それかもっと悪い病気かも、、、)
「あ、、、兄さま。どうしよう」
『落ち着け、大丈夫だ。オレが保健室に運んでやるから』
 倒れたまま動かない時雨を玲央が担ぎ上げようと、腕を取る。
「え、、、」
玲央の動きが止まる。何か予期せぬことが起きたような様子に、真央は不思議に思った。
『どうしたの?』
「あ、いや、、、なんでもない」
 玲央は真央に声をかけられてハッとした表情をした。そして、何事もなかったかのように時雨を担ぎ上げた。
(どうしたんだろう?)
 さっきの玲央は、明らかに何かに驚いているようだった。
(いきなり倒れたことに驚いている訳ではなさそうだし、、、)
じゃあ、一体何に?
よく分からないけれど、胸の中に不安が広がるのを感じた。