波の音が大空に響く中、私はとある人と学校を始めてサボっていた。
「君って、結構まじめだと思っていたんだけどな」
「俺は、まじめだ」
 確かに君は、中間テストや期末テストは上位三位だったけど、授業をサボってる時点で真面目ではないでしょ、と心の中でツッコミをすかさず入れる。
「ずっと思ってたけど、なんで君呼びなの?」
「確かに君としか呼んだことがなかったね」
 だって、君は君だものと心の中で返答していると、君は私に顔を近づける。
「名前でも苗字でもいいから呼んで」
本当にそういうところ。なんで恥ずかしいことを簡単にできるのか謎だ。
「・・・」
「呼んで」
「・・・、月島馨(つきしま かおる)」
 下を向きながらボソっとつぶやく。
 下を向いておいてよかった。だって、耳や顔が熱くなっていくのがわかるから。
「なぜ、フルネーム?」
「なんとなく」
「次、名前」
 好きな人に、名前呼びしてと言われたら誰だって、照れてしまうにきまってる。
「・・・馨」
「よくできました」
 馨は、笑顔で子供を褒めるように頭をゆっくり撫でてくる。でも、馨は心の中で笑えるのを必死に耐えているのだろう。
「じゃあ、手つないで」
 私は、馨を見つめる。
 普通に見つめただけなのに、馨は首から顔を真っ赤にさせて「陽依」と優しく私の耳元でささやく。そしてニヤッと笑い、私の手を握って言った通りに手を握って見せた。
「ッ」
 本当にずるい人だ。はじめは水都のことが好きだったくせに、私が顔を真っ赤にさせる方法を知っている。
 本当に、ズルい。
 私も負けずに、隣に座る馨の耳元で「好きだよ」とささやいていみた。ここも、『俺も』って言われて、自分の顔が真っ赤になるかなと想像していた。馨を見ると、顔も首も耳も真っ赤だった。
「ふっ、あははっは」
「っ、笑うなよ」
 本当に好きだ。恥ずかしくて真っ赤になっているところも、私のために笑ってくれるとこも。
 全部、好きだ。
「隣でいてよ」
「うん」
 私は、つないでる手を強く握る。馨は、うなずいてくれたけど永遠なんてないから。
 絶対なんてないから。
 だから、この瞬間の幸せをかみしめていたい。
 隣に座る馨の顔を盗み見る。その顔は嬉しそうに笑みを浮かべている。
 海に視線を移すと、海は太陽の光で輝いていて綺麗だった。
 そんな海だから、叶えてくれると思った。
 普段は、願いなんて叶わないから願うと考えているぐらいだ。
 だけど、永遠なんてないこの世界で君の隣で笑っていたい。
 そのためなら、信じない願い事でも、なんでもしよう。
『これからも、馨と一緒に笑い合えますように』
 太陽が沈み始めた海に、そう強く強く願った。