翼は心の病を患っていた。
 心に過度の負担がかかると、パニックを起こし、倒れてしまうらしい。心の病は、俺には経験がない。分かってあげられないかもしれない。簡単に、理解出来る、と言っていい病気ではない。
 翼はマグカップを口もとに運んだ。
 俺は窓の外の景色を眺めた。外では雨が降り始めたようだ。
 この暑さのなかでは彼女の体に悪いと思い、場所を駅前のカフェに変えた。
 俺はアイスラテを頼み、彼女はホットココアを頼んだ。
「翼のタイミングで話していいよ」
「お気づかい、ありがとう」
 翼はそう言うと、ココアを一口啜り、話し始めた。