「お~、川野じゃん。どーした?」
高本が走ってくる。ジャージだった。しかも学校の。
今日デートって言ってなかったか? 
「彼女はどうしたのよ。」
私が訝しげに問うと、気まずそうに言った。
「いやーあのさ。喧嘩しちゃって…。」
ずっと仲良しなのに珍しい。
「大喧嘩でさ。大変なんだよ~。」
へえ。正直、ざまあみろと思ってしまう私もいるが、その気持ちを頑張って抑え込み、平静を装って言う。
「どうしてそんなことになったのよ。」
すると高本が気まずそうに答える。
「あのさー、あいつ、めっちゃ俺に電話してくんの。」
はあ…。
「まあ、あんまり忙しい時には電話してこないんだけど、暇な時とか、すぐ電話。ま、俺もしてるからお互い様だけど。」

ただのバカップルじゃない。

「でさ、あと、デートの時とかすぐくっついてくるし、恥ずかしいだろ。んで、他の女子と話したときの嫉妬の仕方が、控えめなんだよな。もっと派手に嫉妬してもらってもいいのに。それで、ちょっと文句言っちゃって…。」

はあ!?マジでただのバカップルじゃあないの!

「あのさ…、」

もう、我慢できない!

「とっとと仲直りしろ~!てかヘタレすぎ!普段の図々しさはどこいったわけ!?今すぐ彼女のとこ行ってこーい!」
そう叱咤すれば、高本もはっとしたらしく…、 
「そうだな~。行くかー!んじゃ!」
と、走り去っていった。

んだよ。この茶番。単純か!
ドラマだったらこのあと二転三転するぞ。それなのに…

5分しか経ってねーぞ!
速すぎんだろ。