ま、そうカッコつけてみても、私の悩みが解決することはないんだけど。
私、川野美晴(かわのみはる)。高校2年生。
 私の好きな人は池川晴太、私の幼馴染であり、クラスメート。幼馴染って言っても、この辺の高校は選択肢が5、6校しかないから、小学生の時からそこそこ仲良しの幼馴染は結構いる。
池川もその中の一人に過ぎない。しかし、正直、なぜ好きになってしまったのかは、よくわからない。
 遠方にあるかなりの進学校を受けることもできたのに、中堅校であるこの高校を受けたのも、家に近いからと言いながらも、実は池川と同じ高校に行きたかったから…、なのか?とも思えてくるのだが、分からない。それぐらい分からない。
 なんせ、自覚したのは今年になってからなのだ。私はそういうことに鋭い方だと思っていたのに、好きになったタイミングも理由も分からずに気付いたら好きになってましたなんて、マヌケにもほどがある。 
 それなのに、好きだと言うことは分かる。不思議なものだ。
「お、晴太ー!オメーの愛しの吉川だぜー!」
コイツはクラスメートの高本。絵に描いたような野球部員の永年補欠である。
 そして何故か彼女がいる。私にだっていないのにーー!
 しかもかわいい。それはもう。何でこんな弱小野球部でも試合に出られないようなヤツとと……!と思うくらい可愛い。
ま、それはそうとして、問題なのはその吉川という女子である。吉川海晴(よしかわみはる)、これまたクラスメート。
しかも何の因果か知らないが下の名前まで同じだ。

そんな吉川海晴だが、最近池川と怪しい…、らしい。私もそう思う。吉川海晴と同じグループの女子は池川を見ただけでコソコソ怪しげに話すし、二人で親密そうに話していることもある。

でも、池川は愚痴ったり、不平不満を言う事はしない。私に対しては、先生がうざいとか、色々愚痴る。男子は、本音をさらけ出せる女子のほうがいい、はず。
第一、関係性が違う。私と池川は小1のときだってクラスメートだったのだ。あまり仲良くなかったから覚えているかは知らんが。

成績だって、私のほうが圧倒的!私は、上位1%の成績を逃したことはない。確かに私にあんな人脈も愛嬌もないけど、でもコミュ力はソコまで圧倒的に差はつけられてはいないと信じている。
うん。多分、大丈夫だ、よね?

と、とにかく、私は、吉川海晴に負けていないと信じている。

「うるせーな。黙ってろ。」
池川が言う。辛辣だなと思った。
まあ、多分そういうところが好きなんだと思う。
でも、とにかく気持ちがわからない。常に飄々としている。
意外と本音ダダ漏れタイプだと思っていたのだが。

結局、今日も何も起こらぬままに、最後のSHR(ショートホームルーム)が終わってしまった。彼の気持ちも分からぬまま、私の恋も動かぬまま。