①物語の設定・主要キャラクターの説明

・物語の世界観
 中世ヨーロッパ風のファンタジーな異世界。剣術と魔法が発展している。
 舞台はA王国、B帝国、C公国が隣接する地域にある、大きな緩衝地帯の街。北がA王国、東がB帝国、西がC公国、南が海という位置関係。各国からはみ出した者や、腕自慢の輩、商人などが集まる場所で、独自の法律や価値観がある。ダンジョンや森もあり、魔物も多く、冒険者業も活発。治安はやや悪いが概ね良好で、みな自由に生きている。
 A王国に住む主人公は、外れスキル『浮遊』を授かったことで、名家の伯爵家から緩衝地帯の街に追放される。辛い前世を思い出した主人公は浮遊スキルを使い、ふんわりしたスローライフを目指す。

・主要登場人物のキャラクター紹介
①フロート・バルジャック(主人公)
〇性別:男性
〇年齢:10歳
〇外見:黒髪赤目。頭の横の毛が長い髪型。正統派な美少年
〇身長/体重/体型:135cmくらい/34kgくらい/痩せ型
〇性格:真面目、素直
〇スキル:浮遊
・人でもどんなに重い物でも魔法でも、何でも浮かべることができる。浮かべたまま動かすことも可能。
〇家族構成
・自分
・父
・兄(一人)
※実母は死去。継母もいない。
〇その他:
 前世は日本人で、ブラック企業に勤める社畜だった。追放宣言を受けたショックで辛い前世を思い出す。今世はのんびり生きたいと思い、追放は逆に良い機会だと感じる。
 緩衝地帯の街で浮遊スキルを使ったお店、『浮かべ屋』を始め、掃除や洗濯、引っ越し、クエストの補助役など街の万事屋として働き始める。
 浮遊スキルは主人公が思う以上に強力で、やがて『辺境の浮遊師』として周辺国でも有名になっていく。

②メロディ(ヒロイン)
〇性別:女性
〇年齢:20歳
〇外見:紫とピンクのマーブル模様な髪色。肩くらいまでの長さ。
〇身長/体重/体型:165cm/55kg/スレンダー
〇性格:律儀、肝が据わっている
〇スキル:『魔導拳』
・種々の属性の魔力を込めた拳法を使える
〇その他:
 元Sランク冒険者。とある冒険者ギルドで男性陣より強くなってしまったので追放された(男尊女卑の強い風潮だった)。次の就職先として、バルジャック家のメイドとなる。過去、フロート父に関係を迫られ困っていたところ、フロートに助けられる。以後、フロートの専属メイドに左遷させられるが、むしろメロディは嬉しかった。
 以前いた冒険者ギルドの男たちと違い、メロディ自身の意志や考えを尊重し、立場に関係なく丁寧に接してくれたフロートを尊敬。また、彼に感謝している。

③パレット(ペンギン型の魔物。もふもふ枠)
〇性別:オス
〇年齢:人間でいうと8歳くらい
〇外見:アデリーペンギンみたいな見た目。お腹に氷の模様がある
〇身長/体重/体型: 70cm/4.5kg/ペンギンの標準体型
〇性格:勇敢、夢見がち
〇スキル:『アイス』
・弱めの氷魔法が使える
〇その他:
 空飛ぶ夢を叶えるため、群れから離れて各地を放浪していた。昔、飛ぶ練習をしていたとき岩に頭をぶつけ、人語を介するようになった。緩衝地帯でフロートと出会い浮遊スキルを使ってもらい、空飛ぶ夢を叶える。以後、フロートとは大事な友達になり、氷魔法を使って『浮かべ屋』を手伝う。
 乾燥に弱いが、陸でも生活できる。青魚が好物で、人間と同じ食事を所望するグルメなペンギン。


②冒頭部分のプロット

【第1話】
 代々優秀な騎士を輩出してきたバルジャック家の次男、フロート。10歳を迎えたフロートは、スキル判定式で浮遊という謎スキルを授かる。『物を浮かべる』という非戦闘系スキルのため、ともに『剣聖』スキルを持つ父と兄から、「外れスキル持ちのお前は、緩衝地帯へ追放だ」と言われる。
 フロートはそのショックで、前世の記憶を思い出す。前世は日本人のおじさん社畜で、少しも休めず過労死してしまったことを。むしろ、追放はのんびり自由に生きるのに好都合だと喜ぶ。
 家を出て、街で馬車を探している途中、実家のメイドだったメロディと合流する。メロディはフロートのことを尊敬しており、「一緒についていきたい」と言う。
 フロートは快諾し、メロディとともに緩衝地帯行きの馬車に乗る。

【第2話】
 およそ一週間後、フロートとメロディは緩衝地帯の街に着く。活気があふれており、また思ったほど治安は悪くなさそうでフロートはホッとする。気持ちいいので海辺を散歩していると、ペンギン型の魔物と出会う。
 ペンギン魔物は人語を介し、パレットと名乗る。どうやら、空を飛ぶため各地を放浪しているらしく、フロートは浮遊スキルで浮かべてあげる。パレットは大変に喜び、フロートと友達になる(もちろん、メロディとも友達となる)。
 その後、まずは住む場所を決めようと周囲を探していると、海辺の近くに古びた小屋を見つけた。玄関には「次なる入居者へ。好きに使ってくれたまえ」という張り紙があった。街から近いこともあり、フロートたちはこの小屋に住むことを決める。
 小屋は所々破損しており、メロディが切り出した材木を浮遊スキルで運んだりして、みんなで一旦の修理をする。
その過程で、フロートは浮遊スキルを使った商売――『浮かべ屋』をやってみようと思い、今世ではのんびりした“ふわふわスローライフ”を送るぞ! と決意する。

【第3話】
翌日。さっそく『浮かべ屋』を開くが、誰も来ない。メロディに「素晴らしい浮遊スキルを宣伝しましょう」と言われ、フロート一行は街に行く。
 パレットを浮遊させて周囲にアピールしていると、どこからか言い争う声が聞こえる。近寄ってみると、おばさん商人とならず者な雰囲気の男たちが言い争っていた。どうやら、おばさん商人が正面の建物への引っ越し作業を頼んだようだが、乱雑に扱われるので怒っているらしい。
 フロートが仲裁に入り、男たちの代わりに引っ越し作業を担うと提案する。おばさん商人は了承するが、ならず者たちには馬鹿にされる。
フロートは浮遊スキルで荷物を次々と浮遊させ、正面の建物に移動させる。ポーションやガラス製の置物などデリケートな品が多かったが、浮遊スキルのおかげで破損は少しもなかった。
 鮮やかな引っ越し作業に、周囲から拍手喝采される。ならず者たちは気まずそうに立ち去り、フロートはおばさん商人に感謝され、報酬を貰う。
 その日から、フロートと『浮かべ屋』は少しずつ有名になっていく――。


③今後の展開

 新しい依頼が来る。依頼主は孤児たちで、シスターが仕事から戻るまでに掃除をして喜ばせたいので、手伝ってほしいとのこと。フロートはスキルで重いタンスやソファを浮かべて隅々まで掃除をし孤児院は綺麗になる。その日の夕方、孤児たちからお礼の手作りお菓子とお手紙を貰い、フロートたちは癒される。
 次は大家族に勤めるメイドから洗濯の依頼。今は帰省の時期で洗濯物が多すぎるらしい。フロートは“水分を浮遊させ即座に乾燥”させて手伝う。一週間ほど働き、依頼達成。
次の依頼は油物が有名な人気食堂での皿洗いで、依頼人はウェイトレス。皿洗いが辞めて困っているらしい。洗濯屋と勘違いされ「油汚れを洗濯しろ」と無茶ぶりされるが、フロートは“油汚れを浮遊”させすぐ綺麗にする方法を思いつく。新しい皿洗いが見つかるまで働き、無事依頼を終える。店からまかないを頂きみんなでおいしく食べる。
 今度は冒険者のクエストサポート。道中、邪魔な障害物を除去してくれと言われ、フロートたちは一緒にダンジョンに行く。帰り道ボスドラゴンと遭遇し強力なブレスを受けるが、浮遊スキルで浮かべて無効化する。クエストは無事に達成でき、報酬の一部を貰い感謝される。
 ある日、フロートは漁師から「海中に変な物が沈んでいて怖い」と言われる。船に乗って近くで浮遊スキルを使ったら、大きな沈没船が浮かんでくる。昔の有名な船でお宝満載という話。 
探検しようとするが、女船長(見た目は人間)の幽霊が出てくる。戦いの雰囲気となるが、フロートが浮遊したところ、“実体を持った幽霊”だと勘違いされる。フロートは彼女と仲間になり船の財宝を貰う。メロディたちと「街の発展に使いたいね」と話し、自宅で保管する。
 後日の夕暮れ時、自宅でみんなと休んでいると、メロディが異変に気づく。十数人のならず者が「沈没船の宝を寄越せ」と襲いくるが、フロートたちは返り討ちにする。彼らはA王国で有名な盗賊団らしく、以前の冒険者がA王国へ引き渡してくれた。
 しばらく後、噂を聞いた父と兄がやってきて、兄と戦うことになる。フロートが剣技も身体も浮かべて無効化したところ、兄は負けを認め反省。良い領主になると誓い、逆に父を叱るようになる。
 一件落着してフロートはスローライフな毎日に戻る……が、実は、おばさん商人と冒険者はA王国、シスターとウェイトレスはB帝国、メイドと漁師はC公国の諜報員で、みな自国に有益な人材を探しに緩衝地帯を訪れていた。
 フロートは知らないうちに、周辺三国では『辺境の浮遊師』と有名になっていたのだ。
 自国に引き入れようと各国が画策しているなど露知らず、フロートは今日も街の依頼に奔走する――。