「お待たせー」
押し黙っていると丘先生が3つのコップをお盆に乗せて帰ってきた。その中には麦茶よりかは黄色い液体がくまれている。
コップをこちらに渡してくれたので飲んでみると爽やかな味が一気に喉を満たしていく。何か悩んでいてもそれをわずかでも忘れさせてくれるような爽快感がその飲み物にはあった。
「……これ、何茶ですか?」
「梅ジュースよ。先生の家が梅農家でよく作るの。おいしいでしょ?」
丘先生は自慢げに話して私とは向かいの椅子に座りながら一口飲んだ。
味を確かめるようにもう一口流し込んでみる。すると、梅の甘酸っぱい味がした。後味にはほのかな甘さが残り、氷のように冷たい。暑い夏にでも飲めば、より一層爽やかさを覚えそうだ。
「はい、ありがとうございます」
喉が潤い、声が少し出やすくなる。無意識のうちに喉が乾いていたらしい。そういえば、図書室に来てから一口も水分をとっていなかった。夏なら間違いなく熱中症で倒れているだろう。
「初日なのにごめんねー。やっぱ保健室戻る?」
どうしよう。確かにパニックになって倒れかけた。調子も狂いすぎたし、保健室で丘先生と2人で過ごしていた時よりかは圧倒的に刺激は多すぎる。戻るのが最善かもしれない。それにあんなムカつくやつとは仲良くなりたくなんかない。
「戻ります」
「そうよね。あ、そろそろ昼休み終わるから先生戻るね。用事あるし。もし何かあったら内線かけて」
丘先生は私の希望を無視して図書室の引き戸の横の壁に固定されている電話を指差した。それからあっという間に飲み干していたコップを3つお盆に乗せて退散していった。ふたりきりになり静かになる中、午後の授業開始の合図がなる。
隣の椋翔くんを見てみると、何事もなかったかのようにノートにペンを走らせていた。おそらく柚香さんがくれたプロットを元に小説を書いているのだろう。
その姿は凛としていて、集中力が途切れることなく、ペン先が紙を滑る音だけが静謐な空間に響いている。まるで時間が彼だけのために止まっているかのようで、そのひたむきな姿に思わず目を奪われた。
内容がどんなものか気になってしまうが、その真剣な表情を見ると、声をかけるのがためらわれるほどだ。
かといって、今は本を読む気にもなれない。窓の外を眺めても依然として雨が降っているだけ。特にお腹も空いていなかったので机に突っ伏しぼんやりと過ごすしかなかった。
押し黙っていると丘先生が3つのコップをお盆に乗せて帰ってきた。その中には麦茶よりかは黄色い液体がくまれている。
コップをこちらに渡してくれたので飲んでみると爽やかな味が一気に喉を満たしていく。何か悩んでいてもそれをわずかでも忘れさせてくれるような爽快感がその飲み物にはあった。
「……これ、何茶ですか?」
「梅ジュースよ。先生の家が梅農家でよく作るの。おいしいでしょ?」
丘先生は自慢げに話して私とは向かいの椅子に座りながら一口飲んだ。
味を確かめるようにもう一口流し込んでみる。すると、梅の甘酸っぱい味がした。後味にはほのかな甘さが残り、氷のように冷たい。暑い夏にでも飲めば、より一層爽やかさを覚えそうだ。
「はい、ありがとうございます」
喉が潤い、声が少し出やすくなる。無意識のうちに喉が乾いていたらしい。そういえば、図書室に来てから一口も水分をとっていなかった。夏なら間違いなく熱中症で倒れているだろう。
「初日なのにごめんねー。やっぱ保健室戻る?」
どうしよう。確かにパニックになって倒れかけた。調子も狂いすぎたし、保健室で丘先生と2人で過ごしていた時よりかは圧倒的に刺激は多すぎる。戻るのが最善かもしれない。それにあんなムカつくやつとは仲良くなりたくなんかない。
「戻ります」
「そうよね。あ、そろそろ昼休み終わるから先生戻るね。用事あるし。もし何かあったら内線かけて」
丘先生は私の希望を無視して図書室の引き戸の横の壁に固定されている電話を指差した。それからあっという間に飲み干していたコップを3つお盆に乗せて退散していった。ふたりきりになり静かになる中、午後の授業開始の合図がなる。
隣の椋翔くんを見てみると、何事もなかったかのようにノートにペンを走らせていた。おそらく柚香さんがくれたプロットを元に小説を書いているのだろう。
その姿は凛としていて、集中力が途切れることなく、ペン先が紙を滑る音だけが静謐な空間に響いている。まるで時間が彼だけのために止まっているかのようで、そのひたむきな姿に思わず目を奪われた。
内容がどんなものか気になってしまうが、その真剣な表情を見ると、声をかけるのがためらわれるほどだ。
かといって、今は本を読む気にもなれない。窓の外を眺めても依然として雨が降っているだけ。特にお腹も空いていなかったので机に突っ伏しぼんやりと過ごすしかなかった。