アンズと暮らす日々はとても楽しかった。気が付けば三年という年月が経っていた。
槿花(むくげ)色の生地に鞠と花が描かれた着物を着させていると、アンズがオレの顔を見て聞いてきた。
「ねーねー、おへやからでたらだめなの?」
手が止まった。
気付かれない様に手を動かす。
アンズの活動範囲は渡り廊下までだ。結界が張っている所しか遊ばせていない。
「アンズは、、、」
「?」
「今日の甘味(かんみ)は何を食べようか」話題を変えてアンズの気を逸らす。
「おはぎ!!」元気にそう答えたアンズ。
(小豆はかなり奉納されていたから作れるな。後で余った小豆を使ってお手玉を作ってやろう、、、)
お手玉はかなり昔に作った物なので、布が破けてしまいそうだ。
 ちらりとアンズを見る。
「アンズはカタクリのつくる、おはぎすき!!」嬉しそうに走り回っていた。
(少し時間がかかってしまうな。それまでアンズが境内に出ないか心配だ)
 摂社の戸は一応鍵もあるし、渡り廊下の鍵は常に閉めているから、出られるとしたらそこまでなんだが、、、。
(まぁ、鍵に手が届かない今はそう心配しなくても良いだろう)

 おはぎを食べ終え、眠たくなったのか寝てしまったアンズを褥に寝かし、先程アンズが散らかした玩具を片付ける。
(そろそろ境内で遊ばせても良い頃か、、、)
あともう何年、このままの関係でこの子の成長を見届けられるだろうか。
育ての親として、、、友達として、、、。願わくばこの日常がずっと続くことを願うばかりだ。