どうしよ。もう20時なのに、LINE来ないなあ。やっぱり冗談だったのかな。そりゃあそうだよね。当たり前だよね。だって湊音だし。忘れちゃったのかな。

『莉緒。莉緒。莉緒ってば』

__わあ、びっくりした。お姉ちゃんか。

「勝手に部屋はいってこないでよ、びっくりしたあ。...ん?てかお姉ちゃん大学受験でしょ!?勉強は!?」

『分かってるって。少しくらい休んでもいいでしょ、で、何考えてたの?』

「え、なんでもない、ほんとに」

『めっちゃ棒読み...お姉ちゃんにはばれてるよ〜?』

__お姉ちゃんめ...。これはしばらくここに居座るよなあ、どうせ。まったくもう。

「は、話したとして解決できるの?」

『ん〜、分かんないけど、聞いてあげるよ』

「あのね、◯◯◯で...」

『うん、だいたいは分かった。つまり、好きな人がいて、その人に...』

「え、別に好きじゃないし!?」

『とにかく...聞いて』

__なんか、今のお姉ちゃん、いつもと違う気がする...。なんか、真面目な顔。

『まず、莉緒がみんなと違うっていうのは、莉緒のせいじゃないってこと。それは、湊音くんだって分かってるはずだよ。あの子いい子だし。だから、そんなに考えなくていいよ。ずっと障がい、障がいって無意識にでも押し付けてたら、嫌だと思うな。湊音くんには何にもできないじゃん。莉緒が辛いのはわかるよ。でも、あの子だって聞くたびに自分には何もできないし、って思っちゃうんじゃないかな。湊音くんじゃないから本当のことは分からないけど、そんなの話す莉緒も聞く湊音くんもお互い辛いじゃん。そんなの、もったいない。せっかく話しやすいって言ってくれるんだから、笑顔でいてあげなよ。迷惑かけちゃうのは、仕方がないことだし。だって人間なんだから、誰だって間違えるのも、失敗しちゃうのも当たり前。ね?』

「うん...そうだけど、」

__でも、湊音に申し訳ないよ。私なんかが隣にいていいのかな。

「でも、私なんかじゃ...。」

『ん〜、とりあえず笑ってみて。莉緒は笑うと可愛いから。保証する』

無理やり広角をあげて、笑ってみる。

『もっと、嬉しそうにしてみて。それで、幸せって言うの。みんなが幸せになれるおまじない』

「嬉しいこともないのに、そんな簡単に笑えないよ。」

__生きてるだけでみんなに迷惑かけてるみたいで、本当はいつも辛い。こころの奥に、黒いもやもやがあって。小学1年生のとき同じクラスになって、話してからずっと親友の茉莉にしか話してないけれど、本当は、死にたい。もっと辛い人はこの世にもっと数え切れないくらいいっぱいいるってことだって、分かってる。分かってるけど...。

『莉緒。どうした?めっちゃ悩んでるみたいな顔して』

「え!な、なんでもない」

『そっか。なんかあったら、気軽に相談してね』

プルルル…

『あ、彼氏...じゃなくて友達から電話だ』

お姉ちゃんは、そう言って私の部屋から出ていった。

あれは、どうせ彼氏だろうな。いつもそうだもん。

まあ、別に誰だっていいけどさ。

今はもう21時をとっくに回っている。

__LINE、結局来なかったな。...湊音の嘘つき。