ふらふらとしばらく夜空を飛んでいたせいだろうか。
幾分か、先程までの気持ち悪さが抜けて、大分マシになってきた。

「ふぅ。先ほどの体調の悪さが嘘のように、だいぶ楽になってきました。あの森は、あの性悪な悪魔さんが居る森でしたからね。気分が悪くなるのは致し方ないことですけど。人間さんは、どうして平気だっ……、」

そこまで言って、ようやっと仕出かしたことに気付く。

「あーーーーー!!!!人間さんを置いてきてしまいましたぁーーーー!!!!戻らねば……!!!」

そして。天使の少女は勢いよくUターンし、あの森へと一直線に飛んだ。

本当は嫌だけど、自分をあの悪魔の攻撃から守ってくれた心優しい人間さんを一人、あんな危険なところに居させてはいけない……!!
逃げるなら、人間さんも一緒に連れてこなきゃ!!

「バカバカバカバカ……!!!あーーもう!わたしはバカです!!大バカ者です!!」

どうか無事でいてください!!人間さん!


*********

「え?俺が、闇属性?マジ?」

一方、その頃。
日陰は、オネエ悪魔から自分が"闇属性"という衝撃的事実を聞かされていた。

「マジよ、マジ。まあ、人間ではほんと珍しいことだから、そう驚くのも無理もないことだけど。闇属性って、ほとんどが魔物か、私みたいな悪魔だからね~。でもな~んで、人間なのに闇属性なのか……。ま、そこんとこは本人に聞いても分かんないわよね~。今の今まで無自覚だったわけだし。」

「·····はぁ、まあ、そう、ですね···。」

「まあ、でも、これで謎が解けたでしょ。なんで私の闇攻撃受けて、平気どころか元気になったのか。なんであの天使が近くにいると気分が悪くなったのか。」

「ああ、まあ、そう、だな……。」

闇属性だから、闇の攻撃を受けた際パワーチャージ、それどころかレベルアップ的なことになっちゃって、逆に天使、光属性が傍にいたから、うぼろろろ……と吐く事態になっていたわけだ。それは、あの天使にも逆に言えることであって、闇属性の空気にたまらず、吐いてしまい、この場から退散したと。つまりは、そういうことだ。

と。納得していた時。
悪魔がじっとこちらを見ていたことに気付く。

「?え、なに?」

「いやね。私、あんたを見てて分からないことが二点だけあるのよ。」

「は?」

「今の今まで、闇属性だって知らなかったんなら、あんた、自分が何属性だと思って暮らしてきたの?」

「……無属性。」

「え?なに?適正診断的な所で、そう言われたの?まさか。」

「あ、いや、なんつうの?ここら辺は、水晶玉で属性調べるんだけどさ。普通なら、火だったら赤、水だったら青ってな感じで、水晶玉に手をかざすと出るんだけど。俺の場合、なんか黒いモヤモヤした物だったから、俺も診断所の人も、ん?ってなって。もう分かんなかったから、とりあえず、どこにも属さない無属性ってことにしときましょうかってなって……。」

「っかぁ~……。ほんと、人間族って、そういうとこ、テキトーよね。ちゃんと調べろっつーの!そしたら、世界的大発見だったかもしれないのに。バカよねぇ~。」

悪魔はそう言っているが、日陰的にはこれで良かったと思った。
だって、これで徹底的に調べられ、「人間なのに闇属性!人間の形をした魔物誕生!!」なんて知れ渡ったら、どんなことをされるか。考えただけで恐ろしい。

「あー。で、もう一つの疑問に思ってることってえのは?なに?」

話題を逸らすため、そう聞くと、「そうそう。これが一番の疑問なんだけど。」と前置きしてからオネエ悪魔は言った。

「なんで、あんた、あの天使(ポンコツ)のこと、身を挺して守ったの?」

「………………」

「………………」

「……ナンデ?」

「こっちが聞いてんですけど。」

日陰自身、分からなかった。
なんで、会って間もないのに、相性的には最悪なのに、その天使を守ったのか。

「……ただ、体が、動いてた。ああ、あいつがやられる、と思った瞬間。俺が、守ってやらなくちゃ、って………、そう、思って……」

「はあ?なに?あんた、それって、あの小娘天使に”恋”したってこと?」

その、悪魔の何気ない一言に、日陰は、

「は、はあ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!??」

顔を真っ赤にして叫んだ。

「うるさっ。」

「な、なにい、言ってんだ!!?なに言ってんだ!?なに言ってんだ!?何言ってんだちょっと!!出会って、間もないのに、ここここここ、恋なんて、恋なんて、するわきゃないでしょ!!!」

「落ち着きなさいよ。でも、あれよ?出会って間もなくても、世の中には”一目惚れ”っていうこともあるのよ?あんた、そ、」

悪魔の囁きはそこで途切れた。
なぜなら、日陰に肩を掴まれ、強く揺さぶられたから。

「なわけないだろ!!!なわけないだろ!!!ひと、一目惚れなんて、なわけないだろーーーがぁーー!!!あんな年端もいかない女の子、好きになったとか!!!俺、どんだけ変態なんだよぉーーガァーーーー!!!!」

「と、とりあああえず、おち、落ち着きなささいいいな、ああんた。ははは話しづららいし、痛たたたいし。」

訴えたら、とりあえず離してもらえたので、乱れた服を整えつつ、「まあ、でも。」と話しを再開する。

「恋じゃないとしても、あんたこれからどうするつもりなのよ?あの子がもし戻ってきたら。一緒にいる気なの?そうだとしたら、止めといた方が賢明よ。」

「·····それは、俺が闇属性で、あいつが光属性だからか。」

「それ以外になにがあるのよ。お互い、身を持って感じたでしょー?毎日、ゲーゲーするつもり?」