照明を消した真っ暗な自室。
 俺は、自室で寝る前だった。

 といっても、俺はベッドに入ってもスマホの画面を開いているので、スマホの光が満ちているという表現が適切かもしれない。
 俺は、スマホで目ぼしい動画を見たあとに、ネット記事を読み漁っていた。
 これは俺の中で日課といっても過言ではないことだ。

 ため息をついた俺は、スマホの画面を閉じた。
 そして目を瞑った。
 俺の意識は、そのまま落ちていった。

 翌朝、俺はいつものように目覚めた。
 それは、何も変わることがない。
 いつも通りの朝だった。
 起きるのが遅く、俺はギリギリまで家にいた。

「いってきます」

 俺はいつものように、誰もいない家へそう言った。
 玄関を出て、俺は通学路を進んでいた。
 
 今日も、天気は快晴だ。
 気持ちがいい。という人間もいるが
 俺にとって、曇り空が一番良かった。
 日が差さずに気温が低い点が良い。
 もっといえば、湿度が低ければいい。
 まあ、この時期にそんな都合の良いことはなかなかない。

 いつも通りの朝。いつも通りの通学路だ。

 特に特注すべきことはない。
 あるとすれば、今日が週末だということだろうか。

 今日が終われば、明日は休みだ。

 それを心の支えにして、俺は道を学校へと進んだ。
  
「「「おはようございます。」」」
「おはよう。」

 校舎の前では、いつも通り生徒会があいさつをしている。
 俺は、いつものようにあいさつをした。
 周囲の生徒に紛れ込み、記憶に残らないように心がけることも忘れない。

 彼らの熱心さに少し辟易しながら、俺は軽く会釈をして校舎へと入った。

 教室に着くと、いつもの光景が広がっていた。
 クラスメイトたちの賑やかな声。
 黒板の前で雑談する女子たち。
 窓際で携帯をいじる男子。
 俺はそんな風景の中、自分の席へと向かう。

 自分の机で寝たふりをして時間を過ごす。
 そんなことをしていると、やがてチャイムが鳴った。

 ホームルームが始まり、いつも通りの一日が流れていく。
 授業中、俺は教師の声を聞きながらも、巧みに意識をゆっくりと遠ざけていった。

 昼休み。

 例によって俺は、裏門から抜け出してコンビニへ向かう。
 今日のおにぎりはツナマヨと明太子。
 買い物を済ませ、いつもの場所で昼食を取る。

 そのまま人のいない自転車置き場へと向かった。
 ここでは、誰もいないように扱われる。
 俺もそうだし、俺が見ている周囲の人もそうだった。
 そんな、一人が許された場所で俺は昼食を食べる。
 ツナマヨのおにぎりに満足した俺は、その場所で、スマホを使用して時間を潰す。

 そんなことをしていると、あっという間に予鈴が鳴る。
 俺は、時間を調整しながら教室へと向かった。

 午後の授業もあっという間に終わる。
 そして、放課後。
 急いで帰り支度を整えた俺は、周囲の喧騒をよそに教室を後にした。

 ここに俺が長居する理由などないのだ。
 なにせ、今日は金曜日。
 家に帰れば、休みだ。

 俺はどこか気持ちも軽く帰宅した。