灼熱の太陽が芝生を照りつける
夏休みの昼下がり。
僕は今日もまた、
ここに来ている。
川のせせらぎが聴こえる
河川敷の日陰。
あの人と初めて出逢った
僕にとっては特別な場所。
それは約束のいらない
魔法の待ち合わせ場所。
漕いできた自転車を日向に置く。
僕はここにいるよっていう
目印になるように。
お気に入りの
あの人が誕生日プレゼントでくれた
生成りのトートバッグの中を覗く。
さっき、買ったばかりの
あの人の好きなミルクティーのペットボトルが
目に入る。
…喜んでくれたら良いな。
バックの中から参考書を取り出し、
いつもの階段に腰掛ける。
あの人は今日も僕を探しに来てくれるのだろうか。
忙しい仕事の貴重な昼休みを使って。
あの人が来てくれたら
僕は隠していられるのだろうか。
あの日から仕舞い込んだ
一番伝えたい想いを。
「夏空ー!」
不意にあの人の声が響く。
ハッと僕は参考書から顔を上げた。
その声の元を探すと
遠くからあの人が笑顔で手を振っている。
その時、
強い風が吹いた。
まるでスローモーションみたいに。
夏風が芝生を揺らし、
サワサワと音を立てる。
亜麻色のセミロングの髪が風に靡く。
夏空を背景にして立つあの人は
真夏の太陽に照らされて
キラキラ輝いているみたいだ。
いつも僕は見惚れてしまう。
初めて出逢った瞬間から。
ずっと。
そして、
僕は今日もあの人をこう呼ぶ。
〝あの人の一番近くにいる為に。〟
「姉ちゃん!」
僕は青野 夏空。
あの人の
〝血の繋がらない弟〟
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