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 結城とは、それが当然のように、昔から決まっていたかのように付き合いが始まっていた。わたしの中で彼女の存在が大きくなるのに時間はかからなかった。彼女の笑顔と優しさに包まれてわたしの毎日は幸せ色に染まっていき、彼女の部屋で過ごす時間が増えていった。
 結城はわたしと同じ契約社員で、彼女もまた築年数の古い木造アパートに住んでいた。わたしと同じ1Kのアパートで、家賃は35,000円。わたしと違って部屋を綺麗にしていたが、質素な生活に違いはなかった。
 今のままでは、2人が契約社員のままでは、これからの人生設計を考えることが難しかった。昇給は見込めなかったし、ボーナスもないのだ。そもそも有期契約なのでいつ首を切られるかわからない。2人共とても不安定な立場にいるのだ。しかし、幸運にも賞金50万円と印税が手に入ることになり、それが一歩前へ踏み出すパワーとなった。
 今より広いアパートを借りて一緒に暮らしたいと告げた。すると彼女は一瞬驚いたような顔になって右手を口に当てたが、すぐに飛びつくようにして抱きついてきた。それが余りにも急だったので正座をしていたわたしは受け止めきれずに倒れ込むように畳に背を付けたが、上に乗る形になった彼女の重みが幸せの大きさを表しているようで、たまらなくなってギュッと抱きしめた。すると「夢見たい」という声が耳に届いた。わたしはまたギュッと抱きしめた。