翌日の倕方、すべおの䌚議ず来客察応を終えた瀟長が瀟長宀に戻っおきた。わたしず結城が立っおお蟞儀をしようずするず、それを手で制しお「お埅たせしたした。ちょっず倱瀌したす」ず蚀っお䞊着を脱いでワむシャツ姿になり、秘曞が持っおきた冷たいお茶をゎクゎクず飲んでから昚倜の続きを話し始めた。 
「矎顔・健やかりォヌキングのこずを参加者の声ず写真を添えお䌚員誌で玹介するず曎に凄い反応がありたした。それで改めお関心の高さを実感し、健やかな䜓ぞの投資を本栌的に始めるこずにしたのです。そしお、健やかな心を育むための蚈画にも着手するこずにしたした」
 昚倜ず倉わらぬ幞せそうな顔で瀟長が話し始めた。
「篠山(ささやた)垂の手付かずの自然が残る小高い土地を賌入したした。野球堎が䜕十個も入るような広さの土地です。適床な起䌏があり、朚々で芆われおいたした。しかし、䜕十幎も手入れがなされおいない状態で攟眮されおいたしたので、地䞻から安く賌入するこずができたした」
「そんな広い土地を、どうする぀もりで  」
「『矎顔・健やかパヌク』建蚭のためです」
 はっ
「䌚員の皆様の健やかな䜓䜜りに圹立おおいただく斜蚭を䜜りたかったのです。最初は駐車堎ず遊歩道ず数か所の小さな䌑憩所だけを䜜りたした。四季それぞれの景色を楜しんでいただくず共に癒しを感じおいただきながら気が぀くず8千歩歩いおいる、そんな環境を䜜りたかったのです」
 予想もしない展開ずそのスケヌルの倧きさにただ驚くばかりだった。
「本圓は無料にしたかったのですが、維持費の分だけ入園料を頂きたした」
 それでも予想をはるかに超える䌚員が来堎したずいう。遊歩道ず小さな䌑憩所があるだけの公園なのに各自が匁圓ずお茶を持参し、ほずんどの人が半日を過ごしたずいう。
「入堎いただいた䌚員の皆様のご芁望を䌺うためにアンケヌト甚玙を準備したした。矎顔・健やかパヌクを、䌚員様の、䌚員様による、䌚員様のための斜蚭にしたかったからです。それで、倚くの方に蚘入しおいただくためにちょっずした工倫をしたした。アンケヌト甚玙の衚玙に倧きな字で『瀟長が必ず芋るアンケヌト』ず曞いたのです。するずびっくりするくらい倚くの方がアンケヌトに蚘入しおいただきたした。なんず、入堎者の80パヌセントです。そのアンケヌトに党郚目を通したしたし、䜕床も読み返したした。その床にお客様の熱いお気持ちが䌝わっおきお、なんずしおでも実珟させたいずいう想いが膚らんでいったのです」
 䞀番倚かった芁望は宿泊斜蚭で、カフェの䜵蚭や、自然に癒されながら゚ステを受けたいずいう意芋もかなりの数に䞊ったずいう。その他には矎術通ずいう意芋もあったそうだ。しかし、これらにはかなりの投資が必芁で、そう簡単に着手できるものではない。そこで蟲園の着手から始めたそうだ。
「これも䌚員様のご提案です。家庭菜園をされおいる方からでした。アンケヌトには『健やかパヌクで䜜った野菜を食べたい。自分たちも参加できる蟲園を䜜っおいただけたせんか』ず曞かれおいたした。私は即決したした。そしお、どうせやるなら無蟲薬蟲園にした方がいいず思いたした。そのために先ず蟲業指導員を採甚し、瀟員が指導を受けたした。それが終わるず、䌚員様にお声掛けしたした。するず予想をはるかに超える応募がありたした。今では数倚くの䌚員様が野菜䜜りに参加されおいたす。収穫された野菜を䞡手に持っお嬉しそうに写真撮圱されおいる䌚員様を芋るず、本圓に幞せな気持ちになりたす」
 瀟長も時々野菜䜜りに参加しおいるずいう。
 そのこずをメモしおいるず、瀟長が急に立ち䞊がった。
「お芋せしたいものがありたす」
 瀟長は机の暪にある曞棚から䜕かを取り出した。厚玙で出来たような倧きな筒だった。わたしたちの前で蓋を開けるず、䞞たった玙が出おきた。蚭蚈図だった。
「ただ蚈画段階ですが、これから時間をかけお䞀぀ず぀実珟させおいこうず思っおいたす」
 その図面には『山小屋颚の宿泊斜蚭』があり、それに䜵蚭する『カフェ』ず『リラクれヌション・゚ステティック斜蚭』が描かれおいた。曎に、『矎術通』ず『アトリ゚』、『ミニシアタヌ』や『ラむノハりス』たであった。
 そこから䞀気に瀟長の倢語りになった。
「カフェで䜿う食材は生産者が明蚘されたものだけを䜿おうず思っおいたす。誰が䜜っお、どう加工し、管理し、流通されおいるのかを把握したいからです。トレヌサビリティですね。野菜も肉も魚もすべおこの考え方を培底させようず思っおいたす。もちろん野菜は蟲園で䜜ったものを䜿いたす。それから゚ステの斜蚭はすべお個宀にしお、倧きな窓からは自然の颚景が芋えるようにする぀もりです。それだけでなく、公園の䞭を流れる川の音、朚々でさえずる鳥の声、颚にそよぐ葉の音などを録音しお、個宀の䞭でその音を流したらどうかず思っおいたす。斜術を受ける方が心の底からリラックスし、ぐっすり眠っおいただける環境を䜜りたいのです」
 するず隣で聞いおいた結城がうっずりずしたような衚情になったが、話はただ続いおいた。
「矎術通を造ったら䟝頌する画家も決めおいたす。ずいっおも有名な画家ではなく将来の画家ですが」
 瀟長は立ち䞊がっお、机の埌ろに掛けおある絵を持っおきた。
「この絵を描いたのも将来の画家の䞀人です」
 颚景画だった。林の䞭に遊歩道ず小川ず䌑憩所が描かれおいた。
「矎顔・健やかパヌクを描いた絵です。玠敵でしょう」
 瀟長は再び怅子に座っお話し始めた。
「矎術倧孊の孊生の絵です。圌らに頌もうず思っおいたす。『矎顔・健やかパヌクの四季・12か月の衚情』ずいうテヌマで颚景画を描いおもらえないか、孊校ず亀枉する぀もりです」
 絵画専攻コヌスの責任者に内々に打蚺したずころ、「孊生にずっおずおも励みになるお話です。孊生の絵を倚くの方に芋おいただける機䌚はほずんどありたせんので、こちらがお金を出しおでもお願いしたいくらいです。ですから、あくたでも授業の䞀環ずしお描かせおいただきたす」ずいう返事を貰っおいるずいう。぀たり、将来矎術通が完成したら孊生が描いた絵を無料で提䟛しおくれるずいうのだ。
「矎術通ができたらアトリ゚を䜵殺したいず考えおいたす。絵心のある䌚員様が宿泊斜蚭に泊たり蟌みながら䜜画に没頭できる環境を提䟛したいのです。自宅でアトリ゚を持぀のは倧倉ですからね」
 零れるような笑みを浮かべた瀟長は曎に倧きな構想を口にした。
「将来は他の地にも『健やかパヌク』を造りたいず思っおいたす。関西の次は関東、その次は䞭郚。䞉倧郜垂圏の近郊に開園するのが倢なんです」
 きらきらず茝くような瀟長の目に吞い蟌たれそうになり、その目の奥で燃え続ける情熱の炎がどんどん倧きくなっおいくのを感じた。そのせいか、この倢は必ず実珟するず確信した時、瀟長が熱く語った先日の蚀葉が脳裏に蘇っおきた。
「生き生きずした毎日を過ごすこず。そのためには、心豊かに過ごすこず。そのためには、本に芪しみ、玠敵な映画を芋お、心匟む音楜を聎き、玠晎らしい絵画を愛でるこず。バランスのずれた食事を心がけ、食べ過ぎないこず、飲みすぎないこず。睡眠をたっぷりずっおストレスをためないこず。運動をしおシャヌプな䜓を保぀こず。感謝の気持ちを持ち、家族や友人、知人を倧切にするこず。困っおいる人に手を差し䌞べるこず。぀たり、心ず䜓を健やかに保぀こず。これが倧事なのです」