言うとは思ってたけど本当にイチイチ腹立たしい。この人のこういうところがあまり好きじゃない。

「仕事だからって理由で何でもしてたら、パワハラで労基に訴えられますよ」 
「パワハラ!?」

 まさか訴えられるまでは考えてなかったのか、目を見開いてビックリしてるあたり思った以上に私の一声は手答えがあったらしい。

「そうですよ? 世の中厳しいんですからね」
「勘弁してくれっ! 俺はパワハラなんてやってない! そんな事をしているつもりも一切ないぞ!」

 明らかに動揺した桐葉さんは狼狽出し、必死に否定しているせいか焦りが言葉に表れている。もしかしてこれが彼の弱点? だとすれば良い薬になるかもしれない。
 少しお灸を据えようと、私はニヤリと笑みを浮かべながら脅しに掛かる。

「まぁ~そんな事になったら、支配人という立場どころか仕事を続けられなくなるかもしれませんねぇ」

 一個人の意見より社会的鉄槌の方が効くはずと睨み、ここぞとばかりに追い打ちを掛ける今の私は、たぶん凄く悪い顔をしている。

 初めこそ桐葉さんは否定していたけれど、想像してしまったのだろう。読み通り、彼はゾッと血の気が引いたようにみるみるうちに真っ青になっていく。
 劇薬並みに効果絶大!……だと思ったけど、効き過ぎたらしい。