それでも、私を心配して気を使ってくれている事はわかってる。
凪と交際するキッカケをくれたのも、1番身近で見守ってくれていたのも、仁菜だから―――
私と凪が出会ったのは、ここ”オルコス・ド・エフティヒア”
皮肉にも職場恋愛が結婚式場だから、別れるとダメージは倍増。
専門学校を20歳で卒業して就職し、その2年後に凪が入ってきた。最初はお互い仕事を覚えるのに必死で意識なんてしていなかったけれど、誰とでも仲良くなる仁菜を通じて徐々に話す機会が増えてきたのがキッカケ。
付き合ったのも、彼女が間を取り持ってくれたから。それが3年前のクリスマス。
あの頃は”一生忘れたくない大切な時間”だとか思っていたのに。今では1秒でも早く忘れたい、思い出したくないなんて――――
「そういえば瑠歌、彼との思い出のモノは処分したの?」
淹れた珈琲に口をつける寸前で仁菜の何気ない言葉に反応してしまい、カップを持つ手を止めてしまう。
「え、まさか……?」
答える前に彼女は察したみたいで、『マジで……?』と溜め息混じりの呆れた反応が返ってくる。
「あはは……」
仁菜に嘘をついても無駄なのがわかるだけに、カップを持ったまま私は振り返り苦笑いを浮かべて小さく頷いて答えた。
「さすがにそれは捨てよ?」
「そう、なんだけど……」
珈琲から立ち上がる湯気を見つめながら、小声で煮え切らない返事をする。