何事かと私がビックリして瞬きを数回。
 イケメン……

「って誰よ?」
「ほら! あのカッコいい支配人!」
「あー……」

 桐葉さん(あの人)かと聞いて損した気分になる私とは真逆の仁菜。

「ねぇ、彼って何歳だと思う? 彼女とかいるのかな!?」

 両腕を組んでテーブルに付き、グイっと上体を前に突き出して興味津々に食いついてくる仁菜とは裏腹に、全くと言って良いほど興味のない私は『さぁ、どうだろうね』と軽返事をしながら手付かずのお弁当に蓋をして席を立った。
 
「反応薄いじゃん。タイプじゃない?」
「そう、だね。口調とかキツイ性格がちょっと苦手。いちいち言い方に棘があるし」
「今日会ったばっかなのに、もうわかるの?」
「え、あ、さっき少し話したから」

 泥酔ホテル事件の事を仁菜が何も知らないのを忘れていて、つい口を滑らせそうになり慌てて訂正しながら冷蔵庫にお弁当を戻すと、社員用の珈琲メーカーにカップをセットして彼女に背を向ける。
 やばいやばい。仁菜にバレたら間違いなく煽ってくるから、今は言いたくないな。

「えー、じゃぁやっぱ合コン?」
「私はパス。今はそんな気分にもなれないしね」
「そんなぁぁ」

 『つまんないなぁ』と頬を膨らませ、ふてくされながらスマホの画面をスライドしているけど、仁菜が1番合コンしたそうなのが言動に表れている。