彼女とは専門学校時代から仲が良く、就職先まで一緒で同期。明るくて人見知りしない性格だから担当した新郎新婦ともすぐに打ち解けるし、プランを提案するのが上手だから評判も良い。
そして。仁菜は私と凪が付き合っていた事は知っている。もちろん、別れた事も……
「凪くんが浮気男だったなんて私もショックだよ。あんな最低男、もう忘れよ」
言葉強めに、残ったもう1つのタコさんウィンナーの頭を目掛けて、グサッと容赦なくフォークを刺す。
「そんな簡単に出来ないから困ってるんだよ。忘れられたらこんなに悩まない」
厚焼き卵半分に切り分けたけど食べる気になれず、『ごちそうさま』と私は箸をケースに戻した。
凪の言葉が……表情が頭から離れず、ふと思い出す度に気持ちが沈んでしまう。なるべく顔を合わさないようにって抵抗したくても、同じ職場だとそうもいかないから立ち直るのにも時間が掛かるし。
「早く忘れるには次の恋に行くしかないね。合コンよ合コン!」
「なんか仁菜が楽しそうだね」
テンションが上がった仁菜の瞳は、いつにも増して輝かしく見えて、張り切って鞄からスマホを取り出し何度か画面にタップを繰り返している。
そんな他人事のような彼女は、突然ハッと思い出したように、スマホから手を離して私にキラキラした瞳を向けて声を張る。
「あ、ねぇ! 今日のあのイケメンはどう!?」