誰が悪い訳じゃない。自分自身が招いた事。そんなの初めからわかっていたはず。
 それなのに……悔しくて情けなくて泣きそう。

「ったく、別れたカップルの修羅場かよ。勘弁してくれ」

 俯いて涙を堪える私の後ろから、聞こえてきたのは溜め息混じりの独り言。それを耳にしながら私は唇を噛み締める。

「あなたには、関係ないでしょ……」

 そう答えると、少し間が空いて『そうだな』と彼は続ける。

「確かに俺には関係ない。だが仕事に私情を挟むな。まわりも、お前自身もやりづらくなるだけだ」

 最もらしい事を言う桐葉さんに、もうそれ以上反論しようとは思えなかった。
 こうなったのも、そもそもは私が仕出かした結果だ。この人に八つ当たりするのは間違いだから。
 ……とは言え、気まずい場面を見られてしまい振り向いて合わせる顔がなく、彼がこの場から立ち去っていく気配を背中で感じながら、時間が経っていく。

 私は何をやっているんだろう――――


***

「はぁ……」

 打ち合わせ後の昼休み。事務所の長テーブルに持ってきたお弁当を広げ、箸で厚焼き玉子を半分に切り分けながら深い溜め息を繰り返していた。

「その溜め息の原因って、やっぱ凪くん?」

 向き合って同じようにお弁当を広げ、タコさんウィンナーの脳天をフォークで突き刺しつつ心配してくれているのは、友人の柳 仁菜(やなぎ にな)