彼は空気が読めないの? まさか敢えて読んでない?
どちらにしてもこれ以上話が拗れるのがどうしても嫌だった私は、必死に否定した。
「そんな”ヤっちゃった”みたいな言い方しないでよっ! 確かに酔って迷惑は掛けたけどそれはっ」
「《《ホテルは》》本当の事だろ?」
「だからっ! そういう事を言うから変な誤解を招くんだってば!」
けれど、凪に言い訳なんて無駄だった。
「別にいいんじゃない?」
「え……」
顔色1つ変えず平然と言い除ける凪の言葉で、必死に繋ぎとめて守ろうとしていた何かが一瞬にして音を立てて崩れていく。
「俺に気にする必要はないよ。瑠歌が誰とどういう仲になっても、俺にはもう関係ないから」
「凪……」
「俺達はもう、終わったんだ」
迷いなんて微塵もなく、感情も籠ってない冷え切った眼差しを残して背を向ける彼の後ろ姿に、私は返事をする事が出来ずただその場に呆然と立ちすくむ。
心に突き刺さって残るその言葉の裏に『お前なんかどうでもいい』って気持ちだと、身をもって思い知らされた。そして後悔だけが残る。
私、本当に馬鹿。別れてすぐ他の男と寝たなんて思われたくなかったはずなのに。
結局こんな事になるなら、色々考えていないで本当の事を説明すれば良かったって。
今更もう遅い。嫌でも別れた事に現実味が帯びていく―――