「お疲れ」
「お、お疲れ様……」
ヘラ〜って苦笑しながら軽く会釈し挨拶を交わしてみたけれど、自分の表情が明らかに硬くてこの他人行儀に違和感しかない。
”仕事だから“と割り切って普通に接しようと思うけど、今の私にはまだ無理。元カレ相手にどんな顔をするのがベストなのか答えがわからなくて、自分自身が模索してる状態だから。
それなのに凪は全然気にしている様子がないから困る。
「瑠歌、もしかして桐葉さんっていう新しい支配人と一緒だった?」
「え、うん。そうだけど……」
「そっか」
真顔で呼び止めた第一声がなぜか桐葉さんの名前。加えて質問してきた本人からは軽い返事しかないから、それだけ? って少し拍子抜け。私に話なのかなって、ちょっと身構えたのに。
「どうしてそんなこと聞くの?」
「あ、いや……支配人と知り合いなのかなって……」
「え、知り合い? 私と支配人が?」
意味がわからず私は首を傾げると、彼は続けて口を開く。
「勘違いかもしれないけど、今朝2人が顔合わせた時にそんな感じがしたから」
「え……」
思い掛けない凪の発言に意表を突かれ言葉を失った。私達が顔を合わせて驚いたのは、ほんの一瞬だったはず。他の誰も気づいていないと思っていたのに、まさか凪に見られていたなんて……
「それは……」
答えづらい質問に、私は目を逸らして軽く俯いてしまった。