……とは言え、他に方法として考えるとすれば、内容をガラッと変えるか削るしかない。だけど現状、それもそれで難しい。
 どうしようかと改めてファイルを見直し『う~ん……』と頭を悩ませていると、正面から重圧とも言える視線が突き刺さる。この”圧”は『何か他にも言ってやろう』って事なのか。

「なんです? 他にも何か文句があります?」
「まだ何も言ってないだろ。勝手に人の心を読むな」
「《《まだ》》って何なの。ってか、そう思っていたのは否定しないだ」

 あまりに馬鹿正直すぎる返答に独り言が声に出てしまった。聴いていたかどうかは知らないけど、聞こえてしまったなら……まぁいいや。

「今更大きく変更するのは無理だろ。どう考えてお客様にも失礼だ。別の方法としては―――」

 そう言って胸ポケットからボールペンを取り出し、時系列を1つ1つ指しながら説明を始める桐葉さん。

「これならそこまでの負担は掛からないだろ。気持ちにも余裕が出来るはずだ」
「なるほど……」

 わかりやすく簡潔に()つ丁寧で、思わず納得させられてしまうのはこの人の《《腕》》なのかもしれない。仕事で一緒に働くには心強い相手よ、悔しいけど。

 テーブルに積み重ねてあった別のファイルに目を留めた彼は徐に手を伸ばすと、今度は装飾デザインが載るファイルを開き、まるでアルバムを見るかのように見開きページの上から下へと目線を動かしてじっくり眺め始めている。