彼女の方は私より5歳下で、この仕事に就いて3年目。
名前は“桜林 茉莉愛”
おっとりした性格で人当たりや面倒見がとても良く、担当するお客様にも非常に印象が良い。腰まであるダークブラウンのストレートの髪に、眼鏡を掛けている清楚な女性。その見た目からも男性社員に人気があるらしい。
身体が弱いみたいで、いつも蒼白い顔をしている。だからか何度か具合が悪くなって、休憩しているところを見掛けた事があったな。
入社してからの教育係は別の女性社員が担当していたから、私との絡みは直接的にはそれほど多くはなかったけど。そんな2人が……?
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見つからないようにと息を潜め、ジッと目を凝らして様子を窺ってしまう。
凪が言ってた好きな人って、たぶんこのコで間違いないと思う。目の前で見せつけられているんだから信じるしかない。
飲み会の席からとは言っていたけど、本当にそこから? 以前から特別な感情があったんじゃないの?……って、そんな疑問が浮かぶくらい親しさを感じる。
今にもキスをしそうなその距離。
待って。ここ、まだ職場なんだけどな。ヤるなら家でやってくれ。
「なんで元カレの《《そんなの》》見てんだろ、アホらし」
思った本音を心の中だけに留めておけなくて、思わず凄く小さな声で漏らしてしまったけど、たぶん2人には聞こえていない。はず。