「だ、大丈夫です。毛布ありがとうございます」


菖さんが掛けてくれた毛布を肩までかける。次第にポカポカと温かくなっていく。


「くしゅん」

「菖さん大丈夫ですか?良かったら隣どうぞ」


私の隣のスペースをあけて毛布をふわっと広げる。一人じゃ少し大きいからもう一人入るくらいどうってことない。


「俺は大丈夫だ。これ見えて寒さには強い」


着物に羽織を着ているとはいえ、屋敷に入る隙間風は冷たく耐え難い。いくら寒さに強くても手足は冷えきるだろう。


「私の隣はイヤですか?」

「そうではない。…後悔しても知らないぞ?」


立ち上がって隣に座る菖さん。毛布を掛けてあげるといきなり肩を抱かれる。


「きゃっ!」

「間が空くと寒い。もっと寄れ」


ジリジリと近づく距離。身体の半分は菖さんに密着する。2人分の体温は火傷するのかと思うくらい熱い。

髪にかかる菖さんの吐息があたる。


…近い。


「橙花、君は人思いで時に無茶をする。そんな君に明らかに足りないのは想像力だ」


声の甘さに加え囁くように話す菖さん。胸の鼓動がトクントクンと加速していく。片腕で私の肩をガッチリと抑え逃げる隙を与えない。


「ごめんなさい。そこまで考えていませんでした」

「だから言ったんだ。“後悔しても知らない”と。これに懲りて、男を簡易に誘わないことだな」

「はい」

「分かればいい。言いたいことは言った。俺は部屋に戻る。何かあったら呼んでくれ」