「罰?」


あんなに悲鳴をあげるほどの罰って……。


「同情しているのか?仮にも人間の君を襲ったあやかしだぞ?ここではむやみに人もあやかしも襲ってはならないという規則がある。それを破ったのはあのあやかしたち。罰を受けて当然のことだ」


この世界では当然のことかもしれないけど、

見えなくたって聞こえてしまった。辛くて、苦しいと叫ぶ悲鳴が。

私がここに来たから、あやかしたちは本能のままに襲ってきて。本当はやってはいけないことだって分かっていたはずなのに。


「だからって、あんなに苦しんでいるのをほっとけません!」

「待て!瑞紀、人間の娘がそちらに向かったぞ!」


誰かが傷つくところなんて見たくもなければ、想像もしたくない。危険なのは承知の上。だけど橙花はあやかしという未知の存在に立ちはだかる決意をした。


「もうやめてくださいっ!!」


罰を受けているあやかしを背で庇うようにして、菖の式の前に立ちはだかる。


「何をしている人間の娘。こいつらはお前に危害を加えた。罰を与えなければならない」


式は冷静だった。きっと人間など自分の相手ではないとでも思っているのだろう。


「その罰、私が受けます」

「なに?」


これは自分がまいた種。関係ない人をこれ以上巻き込むような行為は胸が痛む。犠牲は自分だけで十分だ。