「大丈夫だよ。私たちがついてる」


キツネは応えるように「クゥ…」と鳴く。私も笑顔で返事をした。

柔らかい毛を再び撫で、穏やかな昼下がりの午後がゆっくりと過ぎていった。



ーー菖さん、瑞紀さん、そして当主様は連日、屋敷を留守にすることが多くなった。


私が元の世界に帰る方法や黒いキツネが何処から来たのか調べている。


そのため、北条家の屋敷には使用人と私、キツネのみ。黒いあやかしの襲撃が警戒されている中で、無防備の状態の北条家。


当主様が結界を強化くれているとはいえ、北条家の強者たちが適わなかった相手。その不安が日に日に積み上がっていく。


最初の襲撃以降、屋敷に変化はない。良いことではあるけど、同時に不気味に感じた。


まるでいつでも襲撃出来ると言われんばかりの気配を漂わせているような…。