菓子屋の前で出会った黒いキツネは深い傷を負っていた。

私は消耗しているキツネを北条家の屋敷に連れ帰り、当主である璃央様に承諾を得て、看病を続けている。


北条家に仕える医師からは傷は数週間で治ると言われほっと一安心する。だけど、それ以上にキツネの異能の力は戻るまでにかなりの時間がかかると告げられた。


キツネは人間の姿になることが出来る。でもそれは力が回復して出来るもので、消耗すれば本来の姿に戻ってしまうという。


傷のひとつは大あやかしに付けられたもの。そして、一番状態が悪い前脚の傷は他のあやかしに付けられたもの…。


医師からは下級のあやかしが付けたものとは考えにくく、より力の強いあやかしが付けたものだと推測された。


このキツネが何処から来たのか、誰によって怪我を負ったのか。目覚めるまで分からない状態だ。


ここに連れてきてから一度も目を覚ましていない。話によると眠ることで回復しているとのこと。

大体は数日で目を覚ますらしいけど、この子は眠り続けている。

時折、苦しい表情を見せるキツネ。悪い夢にうなされているのだろうか。

そういう時は優しく撫でると落ち着いてまた眠りについてくれる。