「あなたにも知ってほしい。あやかしのことも人間のことも。ねっ?黒いキツネさん」


気づけば黒いあやかしはキツネの姿になって眠っていた。


菓子屋さんで見たキツネのあやかしは前脚を庇いながら私たちに威嚇していた。走り去る時もやや重心が傾いていたのに気づいた。

初めてキツネを見た時の違和感はその時のものだった。


草むらでキツネを見つけ、予想していたものが確信に変わる。そして人間の姿になったキツネは同じように深く傷ついた腕を庇っていた。


大あやかしにつけられた傷は後ろ脚にあった。だからこの傷は“別の誰か”につけられたものだと考えられる。


誰がこんな酷いことを…。


私はキツネのあやかしを抱えて、北条家の屋敷へ急ぐ。


私は願った。

もし助かったら、あなたのことをもっと知りたい。許されるのなら、あなたと友達になりたい。