「知って何になる?あやかしと人間はお前が考えているのとは違う。力も見た目も何もかも違うバケモノだ!」

「バケモノじゃないよ!同じように生きてるの…!誰かに喜んでもらったり、危険なことをすれば叱ったり、悲しい時も苦しい時はこうして手を差し伸べてくれた」


私は黒いあやかしの前に手を差し出した。振り返ったあやかしは一度手に触れようとしたが、躊躇って戻してしまう。

すると、私の手平に違う手が重なった。


「俺たちはこの手をとって誓った。彼女を護ると。お前が伸ばさぬのなら、こっちから行くとしよう…!」


菖さんが黒いあやかしの手をとって、私の手に重ねた。傷だからの手からは温かい体温が伝わってくる。


「ほら、人間の私と同じ。命のぬくもり」


手に微かに響く鼓動。トクントクんと鳴って、私の鼓動に音が重なる。


「やはり理解できない。人間とは何だ?どうしてここまで俺を知ろうとする?」

「私は知りたいの。あやかしのことも人間のことも。大昔、強い絆で結ばれたあの日を取り戻すために…!」

「あやかしと人間の絆など所詮、偽りだ」

「偽りじゃない。人間と交流したあやかしの中には今もその事を大切にしている人もいる」


着物屋さんの店主、菓子屋さんの瑞紀さんのご両親。突然人間の私が来たにも関わらず、快く歓迎してくれた。ちゃんと残ってるんだよ。あやかしと人間の絆は。