「うるさい!ニンゲンのお前に何が分かる!?我の苦しみが、ジジィを失った我の気持ちがお前などに分かるものか!?」

「確かに、全てを受け止めることは出来ません。私は無力です。だけど止めます!もう、あなたに誰も傷つけてほしくないから!」


次の瞬間、ギュッと握りしめていたお守りが光を放ち始めた。一瞬目が眩んだ大あやかしは正気を失って、私に刃物を振り下ろす。

諦めかけたその時、再び光があやかしを吹き飛ばす。けどそれは私のお守りとは違う、別のものだった。バチバチと鳴るその光は雷。

気づけば黒い雲が私たちの頭上に現れ、あやかしに落ちたのだ。


どうして急に雷が?もしかして菖さん?


振り返って確認しようとすると、黒い影が目の前にあることに気づく。


「あなたは、一体…?」


黒髪に紫紺の瞳、肌は真珠のように白い。手脚が長くて、その左手からはバチバチと火花がちらついている。


「人間、何故あのあやかしを助けようとした?」


紫紺の瞳は影のように暗く、ゆっくりと私を写す。


「あの…」


戸惑っていると、後ろから大あやかしの微かな声が聞こえてきた。雷に感電したあやかしは麻痺して自由に身動きが取れない状態になっていた。


「まだ動けたか。次は必ず仕留める…!」


再び左手を天へと向ける。雷がゴロゴロと鳴り響き、電気が集まってきている。大あやかしを一撃で不自由にした攻撃が次、当たったらひとたまりもない。