大あやかしは一度黙った。だがすぐに刃物を頭上に上げ、地面へと投げ下ろす!

ズドーンと揺れ響く力強い振動。それによって私はバランスを崩してしまった。


「ニンゲンに出会ったら斬る。我はそう教えられてきた。人間と心を通わせたジジィに」

「おじいさんは人間といたのなら、どうして?」

「ニンゲンはあやかしを裏切った。すぐに我らを忘れ、怯えて傷つける。ジジィはそんなニンゲンに殺されたんだ…」


衝撃の事実に言葉を失う。大切な人を失って苦しいという気持ちが突き刺さってくる。

人間が恨まれても仕方がない。けど、だからってこのあやかしまで傷つけるなんて間違っている。色とか見た目とか関係ない。

それじゃあ、人間と同じだよ。傷つけるだけじゃ、なんの解決にもならない。命も奪ってももう、おじいさんは帰って来ないんだよ…。

涙を堪えて、私は立ち上がって大あやかしに近づいた。大あやかしは後ずさりをして、私から距離をとる。刃物を向けてくる手は震えて、その目から恐怖を感じる。


「刃物を置いてください。そんなことをしても、おじいさんは帰ってきません。悲しませるだけです。例え、傷つけることを命じたあなたの大切な人でも、それは許されることではありません!」