「手当てしようにも、ここじゃまともに対処出来ない」


改めて自分の軽率な行動に痛感する。


菖さんがいてくれたら、癒しの異能で助けられるかもしれないのに。

苦しむあやかしをただ見ているしかできない。離れれば別のあやかしがやっていて、襲われるかもしれない。

その予想なすぐに当たる。さらに奥からやせ細った大あやかしがこちらに近づいてきたのだ。


「ニンゲン…!」


手には刃物を持っていた。刃にはこのあやかしの血であろう赤い痕が残っている。傷の形からして間違いない。


「このあやかしを傷つけたのはあなたですか?」

「黒いあやかしは不吉だ。災いを呼ぶ」


やっぱり…。急いであやかしを連れて逃げたいけど、一向に目を覚ましてくれない。担いで行きたくても私の力じゃ持ち上げるだけでも精一杯だ。

何とかこの状況を菖さんに…!


お守りをギュッと握りしめて早くこの場に菖さんが来ることを祈った。


「ニンゲン、お前も災いを呼ぶ。我らのためにとここで斬る!!」

「私もこのあやかしも危害は加えません!黒いあやかしだから、人間だからって傷つけていい理由にはなりません!以前はあやかしと人間は強い絆で結ばれていると聞きました。あなたには居なかったのですか?心を通わせた人間は?」