キツネを追いかけて、無我夢中で走っていた。気づけば菓子屋から遠く離れて、屋敷周りの道とも違う場所に着いてしまった。


ようやく冷静を取り戻した私は、ことの重大さに気づく。サァーっと血の気が引く感覚が襲ってくる。


菖さんと離れちゃった。いくらなんでも、あやかしの世界で一人はまずい。いつ襲われても仕方ない状況なのに…。

お守り、しっかり握っておこう。


私が元の世界から持ってきたお守りには守りの力がある。菖さんたちにこれについて話すと、当主様が力を分けてくださり、その力はさらに強くなった。

何かあれば北条家の菖さんや当主様に力が届くようにもなっている。


「私を守ってください。龍神様」


祈っていると、ガサガサと音が聞こえてきた。辺りは古びた建物が多い。草木も枯れて、荒地状態になっている。

シーンとした場に響く草が擦れるような音。その音を頼りに、進むと黒い影のようなものが見えてきた。

ゆっくりと近づき、しゃがんで草を掻き分けると誰かその場に倒れていた。


「いた。さっきのキツネ」


あやかしは酷いケガを負っていた。よく見ると周りの草には赤い痕が残っている。


「大丈夫?」