「黒は闇のあやかしと同じ色だから、この世界では不吉な者として扱われている。これも何かを暗示しているのか?」


闇のあやかし。部屋に現れたあやかしと同じこの類いだとすれば、禍々しいオーラを纏っているはず。けど、キツネのあやかしからはそんな気配は全く感じられない。

それになんだろう?この違和感。


キツネは「ヴーッ」と唸りを上げて警戒を荒らげている。近寄ればこちらの身が危険だ。


「腹を空かせているのだろう。唸りを上げても口にくわえた菓子は一向に離そうとしない」


キツネの口にはさっき私たちが食べていたのと同じ菓子があった。きっとあやかしから盗んだんだろう。


「菓子だけならいいが、黒いあやかしはどうも好かん。家に不吉なことが起こればお前のせいだからな?」


っーー!

あやかしの言葉を聞いて、昔のことを思い出した。まだ小学生の頃、この金色の瞳のせいで同じようなことを言われたことを…。

色なんて、その人にとっては身体の一部にすぎないのに。


「…決めつけないでよ」


そうこうしてるうちにキツネは走り去って、逃げてしまった。気づいた私は無意識にその後を追う。


「待って!!」