菖さんは「似合っている」と言い、私の前を歩き始めた。その後ろを追って、私はまた彼の隣に並ぶ。

胸がギュッとなるこの感覚は単に嬉しいからなのか。心の奥に眠る気持ちは、きっと彼といて弾むように楽しいからだろう。


「橙花?」

「菖さん。私いま、凄く楽しいです…!」

「俺もだ」


不安はやがて安心へ。そして楽しい感情が私に力をくれる。着物屋さんの店主と会話をして凄く楽しかった。

きっと人間とあやかしはこうして絆を深めていったんだろう。いつの日か、そんな日常が再び訪れますように。