選べってそんな簡単に言わないでください!私がこんなに美しいものを着るなんておこがまし過ぎる。


「菖様、その言い方では、買う気になどなりませんよ?もっと相手の気持ちに寄り添ってあげてください」


店主にズバリ言われた菖さんは悩んだ表情で頭を抱えだした。軽率な言い方をしたことに反省し、もう一度私の目を見てこう言った。


「先程はすまなかった。着物も簪も俺たちから、橙花への歓迎を込めた贈り物なんだ」

「贈り物?」

「橙花が北条家に来てくれてたことは皆、快く歓迎している。その気持ちを形にしたくて、当主が君だけの着物を送ろうと話し合ったんだ」


私のためにそこまで考えてくれていたんだ。ここに来て、目が回るくらい大変なことがあってようやく落ち着ける場所を北条家の方々が用意してくれて、そのうえ着物まで。

その気持ち、きちんと受け止めないとそれこそ失礼だ。


「菖さんあの、ありがとうございます。私のためにこんな素敵なことを考えてくださって、凄く嬉しいです…!だからその…着物選ぶの手伝ってくれないでしょうか?」


緊張混じりだったけど、今の私の気持ちを言葉にすることができた。ちゃんと伝わっただろうか?


「もちろんだ」


初めて会った時から変わらぬ、優しく柔らかな笑顔で返される。胸がドキッと跳ね、頬がカァっと熱を帯びる。