老婆のようなあやかしだ。人間と言われても違和感を感じないだろう。


「橙花と申します。初めまして」


挨拶をすると店主は私をじろじろと見てくる。人間だということがバレたのだろうか?


「初めまして。話は璃央様から聞いています。中へどうぞ」

「お邪魔します」


店の奥にある、部屋にもたくさんの着物が並んでいた。色は外にあった物よりも明るいものが多い。その他にも帯紐や履物、簪まで一式揃っている。


「先程は失礼しました。店の前で騒いでしまって」


ようやく笑いが収まった菖さんは着物屋の店主に深々と謝罪をする。店主は呆れてため息をついた。


「昔から変わりませんね。ようやく北条家の次期当主として、自覚を持ち始めたと思いきや、店の前であんなにはしたなく声を上げるなどと…」


ズカズカと指摘をされて反論できない菖さん。あやかしの頂点に立つという北条家の者に対してここまで言えるなんて、只者ではない。