街へと繰り出した私たちが最初に向かったのは着物屋さん。ここは、北条家が昔から利用している老舗で高級な素材を使った着物が店全体を覆うように並んでいる。


私が着ているのも以前、ここで買われた品物らしい。


人間の世界の現代では、軽くて着やすいものが多い。柄も時代に合わせて変化している。

一方でここにあるのは生地に重みもあり、柄も一つひとつこだわりを感じるデザインが多くてまるで作品のようなものばかり。


今じゃ、あまり見かけない珍しいものに目を離せない。そんな私を不思議そうな目で見る菖さん。


「楽しそうだな」

「はい!柄が細かくあしらわれいて、なんというか…見てて楽しいです!」


あまりに幼稚な返答をしてしまった。クスクスと笑う菖さん。私はなんだか恥ずかしくなって奥の方に逃げ隠れていく。


「すまない。あまりに楽しそうだから、つい」

「私は真剣に感動してたんですよ!笑うなんて失礼です」


私が怒っているのにも関わらず、腹を抱えて笑う菖さん。店中に声が響き、冷ややかな目で見られることもしばしば。


すると、騒ぎに気づいた店の店主が奥から顔を出す。


「菖様ではありませんか!店の中でバカ騒ぎするのは何処のあやかしかと思ったらまさか貴方だったとは。ん?こちらのお嬢さんは?」