「私はやっぱり、誰かが傷つくのは見たくありません」

「橙花…。分かっている。君が悲しまないように、我々も努力する。だが……」


あやかしの世界での規則は遠い昔から厳しく守られている。いくら北条家でも変えることは難しい。

これは私のためじゃない。人間とあやかしがもう二度と、お互いに傷つけ合わない為にと決められたもの。


「あやかしの人間への恨みは俺たちが考えているよりも深い。必ず橙花を傷つけるものはいる。俺の中にも躊躇いはあるが、君を護る為にも致し方ないことだ。それだけは分かってほしい」


菖さんも瑞紀さんも璃央様も同じように苦しんでいる。互いの為とはいえ、仲間を傷つけなければいけないのだから。

変えていきたい。この世界のルールを。苦しんでいるのはあやかしだけじゃない。その時代、あやかしと絆を深めた人間たちも同じよう苦しい思いをしてきたんだ。

それを、私が伝えていかなきゃいけない。

お守りを強く握りしめ、ひたすらその苦しみに耐えていく。