群がってくる化け物たちがスローモーションのように見えた。もう終わるんだと思っていた、次の瞬間だった。

手に持っていたお守りがさっきまでとは比べものにならないほどの光りを放ち、化け物たちを吹き飛ばした。

「何が起こったの?」

化け物の半数はその場に倒れ込む。しかし、お守りの攻撃を受けながらも持ち堪えている化け物たちが再び橙花をめがけて襲いかかってくる。

死を目前としたその時だった。

「お前たち、ここで何をしている」

閉じていた目をゆっくり開けて振り返ると橙花の後ろに歳の近い細身の青年と筋肉質な男が立っていた。

細身の青年の方は紺色の着物に綺麗に光る銀色の髪に、まるで深い海のように青い群青色の瞳をしている。

「あ、(あやめ)様…!」

橙花を襲おうとしていた化け物たちは青年たちを見るなり身震いを起こしていた。声もさっきまでとは比べ物にならないほど怯えている。