群がってくる化け物たちがスローモーションのように見える。

もう終わるんだと思っていた、次の瞬間だった。

手に持っていたお守りがさっきまでとは比べものにならないほどの光りを放ち、化け物たちを吹き飛ばした。

化け物の半数を吹き飛ばすくらい強力な力。先祖代々伝わるこのお守りに、そんな力があったなんて信じられない。

しかし、お守りの攻撃を受けながらも持ち堪えている化け物たちが再び橙花をめがけて襲いかかってくる。

お守りからは光が消え、為す術なくなる。目を力強く閉じて身構えていた。


……あれ?襲ってこない?


目を開けるとさっきまで襲う気でいた化け物たちはその場に立ちすくんでいた。ガタガタと震え、私の後ろをじっと見ている。


「お前たち、ここで何をしている?」


背後からの声に反応して後ろに振り返ると、そこには一人の青年が立っていた。

紺色の着物に透き通るような銀色の瞳をしている。


「あ、(あやめ)様…!」


菖。それがこの青年の名だ。